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自分のありたい姿の中に、ミッションをさがす。 〜東京都新事業発掘プロジェクト事業・パネルディスカッション登壇レポート〜

大企業などの民間企業で培われたノウハウやアイデアを起業や新事業創出に結びつけるための取り組みとして、企業に所属する個人や新事業創出担当事務局に対し、パネルディスカッションやワークショップを通じた起業・新事業創出支援を行う東京都新事業発掘プロジェクト事業『GEMStartup TOKYO』(運営:株式会社ボーンレックス)。2023年6月15日、第4期を迎えた同プロジェクトのパネルディスカッションゲストとして、株式会社No Company代表の秋山真が登壇いたしました。

社内での新規事業立ち上げからカーブアウトに至った経緯、事業におけるミッションの重要性、実際にアクションを起こす上でのマインドセットなど。「ぶれない軸の作り方とビジネスモデルへの落とし込み方」をテーマに、さまざまな視点からトークが展開された当日の様子をレポートします。

大企業ならではのアセットの活用が、やりたいことへの近道に

▲登壇の様子

ファシリテーター(以下 FT):秋山さんは、博報堂グループのスパイスボックスで2年間、デジタルマーケティング・プロデューサーを経験された後、同社内で2018年に採用コミュニケーション事業を新規事業として立ち上げられたと伺っています。その時点で独立して起業するという選択肢もあったかと思いますが、あえて博報堂グループ内で挑戦することを選んだ理由を教えてもらえますか?

秋山真(以下 秋山):博報堂グループという基盤がある中で、そこにあるアセットを最大限活かした方が、自身のやりたいことにより早くたどり着けると考えました。例えば、バックオフィス業務を支援してくれるメンバーがいるというだけでも、自身のやるべきことに集中することができます。その点で、法律や経理などの専門領域をサポートとしてもらえる体制があるというのは、とても大きかったです。加えて、独立して0⇒1で営業をしていくよりも、すでにつながりのあるお客様先に、「博報堂グループとしてこういう新しいことをしようと思っていて」と伝えた方が、お話を聞いてもらいやすかったというのもあります。取引実績のあるお客様がいるというのは、新規事業を立ち上げる上でもものすごい資産だと思っています。

FT:とはいえ、特に大企業においては、新規事業を立ち上げる際に、既存ビジネスとシナジーがなければ全社的な協力を得られなかったり、クライアントからも実績を求められたりといったケースも多いかと思います。その点、秋山さんはどのように突破されたのでしょう。

秋山:最初にパナソニックさんと共同で取り組めたことが非常に大きかったです。新卒採用の支援から始まったプロジェクトでしたが、半年から1年ほどかけ、アウトプットが世の中に出始めてからのタイミングで、他の企業さんからも「私たちもやってみたい」という声が寄せられるようになりました。

FT:社内での新規事業という形から、No Companyさんの設立というカーブアウトに至ったことで、事業面で変化したことがあれば教えてください。

秋山:それはもう、たくさんありすぎて(笑)。特に意思決定のスピードは圧倒的に変わりました。対外的にも、「博報堂グループのスパイスボックス社の中で、採用マーケティングを専門的にやっているチーム」なのか、「No Companyという、企業の人事が抱える課題に全社として向き合っている会社」なのかという点で、社外からの見られ方が大きく変わったと思っています。独立したことで、「組織としてどんなミッションを掲げ、どのようなビジョンに向かっているのか?」がより明確になったとも言えますね。

自身のありたい姿を要素分解した先にミッションがある

FT:秋山さんに”ミッション”というキーワードを挙げていただきました。『GEMStartup TOKYO』に参加されている皆さんには、事業を立ち上げる上ではミッションがとても大事だよというお話をしているのですが、ミッションの重要性について、ぜひ秋山さんのお考えも伺えますか?

秋山:やはりミッションは非常に重要ですね。なぜ重要なのかと言ったら、会社や個人のあらゆる活動の起点となりうるものだからです。また、自社のあるべき姿や考え方が明文化されることで、新しい仲間を迎え入れる際にも、ミッションに共感できるかどうかを1つの判断軸にすることができる。これは非常に大切なことだと思っています。

FT:ただ、事業を立ち上げる前からミッションに囚われすぎてしまい、そこでアクションが止まってしまう方も少なくないと思っています。
No Companyさんは、「スタイルマッチで組織と人を変えていく」というミッションを掲げられていますが、独立当初からこれだけ洗練された言葉が完成されていたのでしょうか。

秋山:実はそんなことはなくて、1期目は、「コミュニケーションの力で組織と人を変えていく」というミッションでした。2期目を迎えたタイミングで、今のミッションに変更した形です。なぜ変更したのかというと、改めて顧客から求められていることをヒアリングしたり、周りで協業してくれているメンバーたちの想いを言語化したりした際に、「コミュニケーション」よりも、「スタイルマッチ」という言葉のほうがしっくりきたため。根底にある目指したい世界自体は変わっていないのですが、言語化した時に、どういう表現が伝わりやすいか、時代に合っているかといったところは変化し続けるものなので、そういう意味では、「最初に掲げたミッションが絶対!」となる必要はないというのが私個人の考えです。

FT:表現そのものに固執する必要はないということですね。

秋山:そうですね。そもそもミッションやビジョンというものは、組織や個人が何に向かって頑張っているのか、何に命を燃やしているのかということに、その都度納得できるものであればいいと思っています。ですので、おっしゃるとおり、表現に固執する必要はなく、むしろ柔軟に変化し続けていいものだと思います。

FT:ちなみに、何に命を燃やしているのかというお言葉がありましたが、それほどまで打ち込みたいと思えるテーマそのものが見つかっていないという方は、どうすればいいとお考えですか?

秋山:命を燃やすというのは、ちょっとアツい言葉すぎるかもですね(笑)。逆行することを言ってしまうかもしれないんですが、ミッションだからといって、「大それたメッセージを残さなければ!」と思う必要はないと思っていて。あくまでも、シンプルに自分のありたい姿を考えてみることが大事だと考えています。ありたい姿やなりたい姿をどんどんブレイクダウンして、要素分解してみる。そうして出てきた言葉こそが、その人やその事業にしかないぶれない軸であって、それを“どう言うか”の表現は、先ほど申し上げたように、柔軟に変更すればいいと思いますね。

「自信がないことにチャレンジできた」という自信を

FT:実際に事業を推し進めていく上では、ミッションはもちろんですが、「このビジネスはいける!」という自信や確信を持てることも大切だと思います。秋山さんは、事業を進める上でどのようなマインドやアクションを大切にされていますか?

秋山:新しいことを始める時は、誰しもが「ちょっと怖いな」「心配だな」と感じると思いますし、私自身もそうです。ただ、未熟ながらもここまで事業を続けてきて思うのは、自信がないことを自信がないままやってみると、意外とそれが自信になるということ。つまり、“自信がないことにチャレンジできた自信”を手にできるんです。それはほんの些細な成功体験かもしれませんが、積み重ねていくと、だんだんと、「これまでもそうやってきたよな」「なんとかなってきたよな」と思えるようになる。私自身は、そんなマインドセットでアクションし続けています。

FT:となると、まずは自分のマインドセットをいかにしていくかがポイントになるんですかね?

秋山:そうだと思います。ただ、新規事業という点で言えば、少し違う見方もあると思っていて。というのも、個人的には、新規事業はまだスタートラインにも立てていないと思っているんです。そもそも売上が出てないのに、売上が減ることはないですからね(笑)。その捉え方だと、前に進むしかないので、結果としてアクションせざるを得なくなる。ゼロから一歩を踏み出す以上、取れるリスクは取って、どんどんチャレンジしていくことも大切だと思います。。

FT:ありがとうございます。…残念ながらお時間が迫ってきてしまいました。最後に、秋山さんから参加者の皆さんにメッセージをいただけますか?

秋山:新規事業を立ち上げる際、「そもそも似たような事業があるんじゃないか」と、不安を感じてしまう方も多いと思います。ですが、私はまったく同じ事業なんてものはこの世に存在しないと思っていて。なぜなら、その事業には必ず、その事業にしかないミッションや想いがあるからです。そして、ミッションや想いは必ず、事業の細部に宿る。仮に類似したサービスがあったとしても、タイミングやマーケット、ヒト自体が異なるので、同じものには絶対になりえないんです。ですので、そこはぜひ自信を持って、打席に立ってほしいと思っています。私もまだチャレンジの途中ですので、これからも自分なりのスタイルで、上を目指せるように頑張ります。

FT:素敵なメッセージ、ありがとうございます。本日のゲストは株式会社No Company代表の秋山真さんでした。ありがとうございました。

秋山:ありがとうございました。

<最後に(まとめ)>

▲参加者と座談会で会話する様子

話に聞き入りながら、真剣にメモを取る参加者の方々がとても多かった今回のイベント。パネルディスカッション後の座談会では、参加者同士でも積極的に意見交換をしている様子が印象的でした。アンケートで参加者の皆様から届いた感想を、いくつかご紹介します。

◎自分が今取り組んでいる事業にすぐに生かせる点が沢山あり、お話を聞けてよかった。
◎実際にチャレンジしている方のミッションや事業立ち上げの経緯を聞くことは参考になった。
◎何に命を使うか。ミッションやその背景にあるアクションの重要性の話が印象的でした。

「スタイルマッチで組織と人を変えていく」というミッションを掲げるNo Company。私たちはこれからも、スタイルが生きる社会を目指し、SNSデータの分析を起点とした採用マーケティング支援をはじめとする独自のソリューションを提供し続けてまいります。

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