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#5 Gartner提唱「ワークストリーム・コラボレーション」とは?

「先生」のオンライン/リアル兼用のナレッジトランスファー型サロンを開設に向けた、新規ビジネス立ち上げのプロジェクト(「先生サロンプロジェクト」)をサポートしている話のつづきです。

前回はこちら、最初から読む場合はこちらからどうぞ

どうやって議論をすすめるか

「先生サロンプロジェクト」ですが、先生もボクも仕事があります。もうひとりのメンバー、ボクを誘ってくれたHさんも、すでにFIRE(経済的自立)されていますが、毎日忙しくされています。そんなメンバー3名が、どやってプロジェクトを進めているのか、が本日のお話です。

「そんなの、『Zoom使ってやってます』ってオチだろ?」と思われた方!あまあまです。この記事を読む価値があります。Zoom的なビデオ会議の要素も使いますが、それはOne of Them、要素のひとつでしかありません。現在のIT技術を使用した最新のプロジェクト遂行方法をご紹介させていただきます。

なにげに、本業のIT企業では、似たようなことは十数年前から行っていました。「先生サロンプロジェクト」との違いは、「ソフトウェア製品ローカライズ(かんたんに言うと日本語化)」作業段階、つまりプロジェクト管理段階からでした。「アイデア出し」段階からは初の試みです。また、外部の人たち(先生とHさん)とではなく、海外の開発部門の人たちとやっていました。

あ、あと言語が違いますね。英語ではなく、今回は日本語でOKです。とてもとてもラクです!Project Leaderであるボクは、英語で議事進行をしながら、決定事項をその場でメモ取っていました。Meeting Memo(議事録)として、決定事項を共有、確認、残しておくことはとても重要です。後で言った言わないになった際のエビデンス、リファレンスになります。がんばって行っていました。

実はこの経験が、今、とても役立っています。英語でミーティングをリードし、その場で英語でメモを取ることに比べたら、日本語で行うのは1/2ぐらいの労力でできます。リモートワークが一般化した現在、ボクの特技のひとつとなっています。ミーティングの最後には、メモした決定事項を見せながら、Due Date(締切日時)を確認できます。ミーティング終了後には、すぐさまそのメモを送信。ミーティング後には、すぐに次のミーティングにと頭を切り替えることが可能です。

ちなみに、この芸当、リモートで、デュアルモニターでないとツライです。最適なキーボードで素早く入力ができる環境で、メモ画面と資料共有画面を見れることが必須です。会議リードとメモ取りを同時にするためには、普通のオフラインミーティングだと、いくらプロジェクタとPCのデュアルモニターにしていても、そこまでPC操作をスムーズには行なえません。

話が脇道にそれてしまいました。失礼しました(汗、話を本筋に戻し、「どうやってリモートで議論を進めるか」です。結論から書くと、「ワークストリームコラボレーション(Workstream Collaboration(WSC)」で行います。

ワークストリーム・コラボレーション(Workstream Collaboration(WSC)とは

Gartnerが提唱した現代のプロジェクト遂行方法です。メンバーがどこにいようとも、会議前、会議実施中、会議後もゴールや進捗を共有、リモート環境でも議論を前進させる方法です。議論のやり方は特段こだわりをもたずに、チャット、電話、ビデオ会議/画面共有、オフライン会議、何でもOK。その時々で最適な方法を選択します。そして、プロジェクトの進捗やTODO、資料をすぐに確認できるプラットフォームを用意します。

これが一連のフローになります。

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大きく、BEFORE、DURING、AFTERに分かれています。「コラボレーション=皆で仕事をする」とざっくり定義すると、認識合わせが特に重要になります。それを継続的なフローを前提に、複数方法によるコミュニケーションで実現します。

DURING
意見やニュアンスなどの細かな認識合わせは、やはりミーティングが一番効率的です。それがDURING(会議(中))となります。

今までのオフライン会議(対面会議)では、その会議にのみフォーカスがあたっていた嫌いがあります。毎週の進捗会議まで他のメンバーの進捗はプロジェクトリーダーも詳細には把握していないなどざらで、その場で皆が全体状況を理解していた感じです。

WSCでは、オフライン会議は一連のコラボレーションワークのパーツでしかありません。口頭説明による認識合わせの目的は変わりませんが、それ以上でもそれ以下でもありません。そのため、別に直接会う必要はありません。オフラインで行う(会う)必要あれば、オフラインでやればいいし、オンラインの方がいいならオンラインでやればいい、非常に柔軟です。

あくまでもボクの認識ですが、長時間話すブレーンストーミングでない限りは、オンラインミーティングで十分です。ホワイトボードに思いついたことを書き、他のメンバーが「そうじゃなくて、こう」と加筆、修正できるのはオフラインミーティングの最大の利点です。オンラインでもITツールを使えば同じようなことはできますが、スピード感やリアルタイム性という点では、まだリアルなオフラインには追いついていないかな、と感じています。

逆にオンラインの利点は、場所を移動せずに実施できることです。その前後に別のミーティングが入っていてもOK。移動時間という制約事項をなくすことができます。また、録画できるのもメリットになります。参加できなかったメンバーは一連のやり取りを倍速で確認することができます。

図にある「安全に接続」や「画面共有/アプリ共有」はもはや当たり前。普通にできる前提です(ビデオ会議製品のZのセキュリティがゆるい点はここではあえてスルーしますw)。

BEFORE
通常プロジェクトのオフラインミーティングでは、事前に資料や背景情報、進捗が共有されることは稀です。あくまでも、主役はそのミーティングなので、そこで議論/報告する資料は初めて共有されることが多いような気がします。

一方WSCでは、上述のとおり、ミーティングは、コラボレーションワークのOne of Themのパーツでしかありません。ミーティングは開く必要があるから開くのであって、それまでに進捗が報告できてしまう、問題が解決できてしまう、皆のフィードバックがもらえてしまう、のであれば、開く必要はありません。

そのため、情報共有はミーティング(DURING)以外の場でもコンスタントに行われることになります。それが、BEFOREであり、AFTERです。

意見交換は「チャット」がメインです。自分の考えを伝えると、メンバーの反応が即座に確認できます。一週間も待つ必要はありません。資料を共有して、どう思うかを聞くこともできます。メンバーは自分の可能な時間でそのレスポンスをします。チェットで返信するのが難しいなら、電話で説明すればいいですし、メンバーにも詳しく説明したいなら、ミーティングをセットすればいいだけです。

急ぎであれば、皆が参加可能な15-30分の時間をオンラインで、深く話す必要があるなら、最短な日時でセットできる別日にオンライン/オフラインどちらかで、その目的に応じて選択できます。

AFTER
AFTERもチャットが中心ですが、DURINGで話された、TODO事項を確認する必要があります。また、アサインされた(割り振られた)タスクの成果物である資料を共有する場合もあります。そのため、”ファイル共有”や”タスク管理”が入ってます。

いつからがAFTERでいつからがまたBEFOREになるかは不明ですが、”チャット”中心でコラボレーションワークを常に進めながらプロジェクトを進めていくのがWSCの特徴です。

先生サロンプロジェクトの実際

まずは、図にあるように、チーム用の仮想会議室作成がスタートです。ここで議論ができるようにします。個人で複数のプロジェクトに入るのは、今や普通のスタイルだと思います。メンバーもプロジェクト毎に異なります。そのため、プロジェクト毎に仮想会議室を作成し、メンバーがその会議室に入室できるように設定します。

「先生サロンプロジェクト」では2つの仮想会議室を用意しています。ひとつはLINE、もう一つはコラボレーションツールです。

LINEの説明はいりませんね。グループLINEにすれば、いつでも好きなときにコミュニケーションが取れます。アイデアがひらめいたときにはすぐにコメントを残せます。絵文字も充実しているので、感情表現もしやすく、時短になります。

なんといってもいいのが、皆が使い慣れていて、まくら言葉が不要な点です。「お世話になっております。」とかは一切不要で、要点だけ書けることです。普通に会話をするように考えを文字や絵文字で共有できます。

一方、弱い点もあります。

✔情報のまとめ機能がない
✔有象無象のやりとり情報が多い
✔ファイル保存期間が2週間しかない

フローとしてのディスカッションのやり取りはいいのですが、情報のまとめ機能がありません。また、ディスカッションのしやすさゆえに、有象無象のやりとり情報(例えば、人のコメントに、”笑”と返信等)が存在してしまうことが挙げられます。あと、無料で使用できるのでファイル保存期間が2週間というのもネックです。

この弱さを補うのがコラボレーションです。MS-Teamsに代表されるコラボレーションツールは、ビジネスの現場ではよく利用されています。Slackなども有名ですね。

これらコラボレーションツールは、情報共有をメインに考えられているため、ファイル共有や検索、Todoの進捗会議などは得意なところです。MS-Teamsにはビデオ会議機能もついているので、いつでも画面共有しながら会議を行えます。

ただし、少々おカタイ。。冗談やプライベートトークを織り交ぜることを躊躇していまします(ボクだけかもしれませんが)。それに比べると、LINEはプライベートからスタートしたツールなので、より気軽にコミュニケーションできます。

チャットが得意なLINE、管理が得意なコラボレーションツールを組み合わせてプロジェクト遂行をしています。

そうそう最初の段階で実際に行った方がいいのが役割の明確化です。「先生サロンプロジェクト」メンバーは気心がしれた3名だけです。自ずと役割は決まってました。

サロンコンテンツ:先生
人集め:Hさん
プランニング・プロジェクト管理:ボク

通常のビジネスの役割に落とし込むと、

技術:先生
営業:Hさん
マーケティング:ボク

といった感じです。ボクは、新規ビジネスデベロップメント、新規プロダクトラウンチは20数年超のベテランです。また、先生のビジネスについても、多少の知識はあります。そのことを理解してのメンバー招聘なので、ボクがリードすることに二人は全く異存はありませんでした。

まずは、このワークストリーム・コラボレーション(WSC)の考え方を説明し、今後のやり方、そして実際のラウンチデート(Launch Date:リリース日)を決めて、そこに向けての作業をブレークダウンすることを伝えました。

その他プロジェクト管理ルール

外資系IT企業のプロジェクト管理を馴染みが薄い先生とHさんと実践するには、そのプロトコル、お作法を理解してもらう必要があります。そのために、WSCを説明するとともに、3つのことを実施しました。

1.コラボレーションツールの使い方
なにげに二人共、Macを使っていたのでWindowsしか使ったことのないボクでは説明しきれないところがありました。特に、ビデオ会議等に不慣れな先生の音声入力は少々手こずりました。

「まずはBluetoothのWirelessイヤホン/マイクを買って下さい」とお願いしたところ、先生は骨伝導式のを購入。流石ですw

2.ファイルのリビジョン管理
アイデアベースで話を進めていると古いものに上書きされ、そのファイルがさらに上書きされていくことになります。すると、それが最新のものかどうかの判断が付きづらくなってしまいます。

そのため、同一ファイルを上書きする際のファイル名の付け方については、簡単なルールを決めました。ファイルを更新したら、ファイル名に日付をいれること。R1、R2とする方法もありますが、ぐちゃぐちゃになるので、日付が一番明確です。

入会説明を行った人、入会意思を示してくれた人の「見込者リスト」は日々更新されます。SFDCのようなオンラインツールもあるのでしょうが、個人の延長でそこまでお金を払う必要もないし、また二人にやり方を説明するのも面倒です。Excelでフォーマットを作成し、そこに入力してもらうようにしました。今何人をわかるようにしたいので、数式を埋め込みました。それも、ファイルのリビジョン管理に基づいて管理するようにしました。

3.WBS

WBS:Work Breakdown Structure (作業分解構造)は、プロジェクトのスケジュール管理に使われるツールの1つで、作業工程を細かな作業(Work)に分解(Breakdown)し、構造化(Structure)することで管理する手法を指す。Source:大塚商会IT用語辞典

IT用語だったんですねw

ボクの場合は、長年マーケティングをやってきたので、3C→SWOT→STP→4Pの一連のマーケティングフレームワークフローの最後の段階、スケジュール化として、4Pの実施項目をブレークダウンしながらスケジュール化することがほとんどです。

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4PのProductを講義と見立て、「誰が、何を、いつまでにやるのか」を一元的に把握できるようにしています。このフォーマットはボクのオリジナルで、Key milestoneで全体日程を把握できるようにしています。

この下には、4Pのその他要素、Price、Promotion、Place(場所ではなく、再販、実際にはアフィリエイト的な集客)のスケジュール管理が入っています。

WBSのメリットは、クリティカルパスが見えることです。クリティカルパスとは、プロジェクトの進行を左右するタスクで、そのタスクが終了しないと、次のタスクに影響が及ぼすポイントのことです。今回のクリティカルパスは、募集開始を7/17にセットしているので、それまでに募集要項を完成サせていないといけません。

見えていませんが、図のPromotionの集客に、「募集要項/企画書」が密接に絡んでます。ガントチャートと的ですね。

まとめ

ある人からWBSの話をしていたら、「の~ちさんは、プロジェクトマネージャの経験があるの?」と聞かれました。外資系IT企業のプロダクトマネージャーを長年やってきたため、システムエンジニアを管理するプロジェクトマネージャーの経験は全くありません。

すると、「まープロダクトマネージャーの製品ラウンチとか、一連のアクティビティを管理するからプロジェクトマネージャーみたいなもんですからね。だからWBSをの~ちさんは普通に使いこなしているんですね」と言われ、はたと気づきました。

あっ、ボクってプロジェクトマネージャーできるんだ!

と! 

こんな感じで、先生サロンプロジェクトをプロジェクト管理しています。

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