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巣を張る蜘蛛に想う


猫野サラさんの企画に参加します。


インプレッションというよりインスピレーション。
記事を読んだ瞬間に蘇った記憶。

 


 前職では草むらに立ち入る事が多かった。
 ヒトを捕らえて喰らうのが目的ではない事は知っているが、ヒトが通れる程の幅のけもの道は、蜘蛛が巣を張るには丁度いい。初めのうちはよく捕らわれていたが、そのうち枝払いをしながら歩くようになった。

 気持ちに余裕が出来てきると、落ち葉を拾い蜘蛛の巣にくっつけ、蜘蛛の動きを観察してみたりした。
 余計なモノが張り付いているとハントの邪魔になるのだろう。スルスルと葉に近づき、手際よく邪魔なモノを落とし中心に戻っていく。それにしても見事な脚さばきだ。何故、自分の巣にくっつかないのか気になり調べてみたりもした。粘着するのは横糸だけと知る。

 蜘蛛の事を知ると、巣を破壊する事が申し訳なくなってくる。それでも通らなければならないので、自分が通れる程度に幾つかの支持部分だけを外してみた。綺麗な網目が崩れてしまった。

 仕事を終えて元来た道を戻り、壊した蜘蛛の巣に差しかかった。主は壊れてしまった巣の修復をしていた。よく見ると、崩れた糸を手繰り寄せそれを食べていた。その姿がとても哀しそうに見えて仕方がなかった。

 とは言え、お互い生きていくためには必要な事。通る時は、申し訳ないと思いながら半分だけ壊させてもらうよ。

 

 この記事を目にした時、そんな事を思い出した。



#寄せ文庫

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