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俺の夢

ドライブをしていた。ナビゲーターシートにはスマートで素敵な彼女。と、言いたいところだが、鎮座しているのは地図アプリを立ち上げてあるスマートフォン。今のところ。

コンビニエンスストアが正面に見える丁字路にさしかかった。丁字路信号機は歩行者信号が点滅している。ならば、丁字路迄の距離を考えるとタイミングは赤になるだろう。アクセルペダルから足を離して惰性で進む。

さて、ここはどちらに曲がろうか?気ままなドライブとはいえその先に何か面白そうなものはあるのか気になる。その先を確認するため、ナビゲーター・シートのスマートフォンを手にしようと、助手席に眼を落として手を伸ばした。

予想通り丁字路の信号が赤になり停止すると、突然警察官が現れた。窓を開けると「運転中にスマートフォンを操作していたな?すぐそこのコンビニエンスストアの駐車場に行け」と言われた。

ナビゲーションを見るのもスマートフォンの操作に当たるのか?とモヤモヤした気持ちで、コンビニエンスストアの駐車場に愛車をすぺりこませた。

駐車場に停車すると、コンビニエンスストアのユニフォームを着たお姉さんが窓を開けてとジェスチャーしてきた。窓を開けると、「おめでとうございます。あなたが1万人目のお客様です。こちらはプレミアムな招待状になりますので、是非店内にお越しください」と降車を促された。

言われるがままに店内に入ると、奥のイートインに案内された。イートインに入るとふかふかの絨毯が敷かれた部屋に、ベルベットの長椅子が設置されていた。長椅子には菜々緒を思わせる女性が、タイトスカートからスラリと伸びた脚を組んで座ってた。愛車のサイドシートにもこんな感じで脚を組む彼女が…なんて事を考えていたら、ふかふかの絨毯に足を取られて転んでしまった。その拍子に、テーブルの上に置いてあっただろうグミキャンディがこぼれ落ちてしまった。

気不味い。そう思いながらも、つい彼女の方を見てしまった。目の前には、パンティが見えそうで見えない綺麗に組まれた脚があった。気不味い思いが増幅する。

こぼれ落ちたキャンディを拾い集めていると、そこに細身スーツにゴールドのアクセサリー身につけた色黒の男性が、変な花瓶を持って現れた。

「花瓶に傷がついた。どうしてくれんの?」

いきなりの事に、気不味い思いも吹き飛んだ。
「グミキャンディで、しかもこんな柔らかい絨毯のある床に落ちたグミキャンディで、その花瓶にどうやって傷がつく?そもそも、花瓶はどこにあった?説明してくれ。」
と、色黒細身スーツの男に詰め寄った。

勢いに任せ更に詰め寄る。
「プールの飛び込み台から飛び込んだ時に、入水角度によってはコンクリートに打ち付けられたような衝撃になるとか。ならば、"豆腐の角"も超高層ビルの屋上から落とした場合、トンでもない衝撃に襲われるだろう。当たる確率はトンでもなく低いけどな!グミキャンディもしかりだ!」

ぐうの音も出なくなった色黒細身スーツは、すごすごとその場を去って行った…

隣では、色白太身スーツの男がぐうぐうと鼾をかいて眠っていた。そんな鼾で起こされた通勤電車での朝の一時。

金も免許もない俺には、愛車でのドライブなんて夢。ましてや、綺麗な脚の彼女とのドライブデートなんて夢のまた夢。

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