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個展の記録「メヒコ イ ハポン 日本⇆メキシコ 行き交う空想」

2024年4/1 ~ 4/8
町田駅前、パリオビル3階のギャラリーでの個展を行いました。

パリオでは「パリコレギャラリー」と称して様々なジャンルのアーティストの企画展示を行っています。今回はその第31弾としてお声がけ頂きました。


展示のポスター

以下その記録です。


展示の概要

個展のタイトルは「ハポン イ メヒコ 日本⇆メキシコ、行き交う空想」
ハポンイメヒコはスペイン語で「日本とメキシコ」
2023年秋に訪れたメキシコでの経験をテーマに日本画材を用いた作品の展示です。非常にシンプル。

メキシコでは特に現地の考古物、民芸品、それからペンキの剥がれた壁などに創作意欲を掻き立てられました。


メキシコ民芸品博物館にて。こういった素朴で素敵なものを夢中で撮りまくりました。

メキシコで見つけたものから想像を膨らませて作った新作に加えて、過去作も整理し「これは共鳴しているのでは」と感じた作品も展示しました。大幅加筆してほぼ新作になったものもあります。

2021作「おきわすれ」。少し加筆したものの、元々どことなくメキシコ要素があります。


その結果、作品56点+グッズ。作品数も非常に多くなりました。

メキシコ経験に合わせて制作が捗ったというよりは、元々メキシコ的な感性というか、表現の方向性近かった印象です。(実際に同様のご意見もたくさんいただきました)



「行き交う空想」

タイトル内に「空想」と入れたのにも理由があります。

今回はメキシコ要素を入れつつも、あくまで今までの延長線上で制作した「空想的な」作品を並べたかったからです。

なので、現地での体験記や、メキシコの魅力を伝えようとするような要素は意図的に避けました。

私のメキシコでの滞在期間は2週間程度。作品を通じてメキシコを語ろうとしてもきっと強張って無理が生じます。作品の中に骸骨、死者の日、食文化などの観光的に知られた要素も皆無です。


ギネス記録に認定された世界一大きな死者の日の祭壇。圧巻でしたが、創作意欲とは別腹。

私が創作的にメキシコで受けた刺激も偏っており、日本に住むメキシコ好きな方、メキシコに興味のある方が観たいものはズレが出てしまいます。

なので、なるべく普段通りに制作して結果としてメキシコでの影響がにじみ出るような見せ方を心がけました。


「メキシコで見つけた偏愛的写真」のスライド上映もしました。
「自立直近」メキシコ的でもあり、日本的でもあり。行き交う空想。


大津絵 or 町田絵 or メキシコ絵

そんな中、メキシコで購入した「アマテ」という樹皮の紙に描いた作品も展示しました。

会場のある町田市は町田市は国内有数の「大津絵」をコレクションしている市です。実は大学生時代に町田の博物館(現在は閉館)まで大津絵の展示を観に行った思い出があります。

大津絵は今でこそ芸術的価値が認められていますが、元々は安い紙に安い絵の具を用いて、いわゆる「絵師」ではない人々の描いたお土産としての民画。

私がメキシコで刺激を受けたものも、現地の民芸品だったことに(勝手に)縁を感じたので何か作ろうと思い至りました。

そこで、メキシコでは民画にも使われていたアマニ紙に、同じくメキシコで見つけた剥がれた壁等からイメージを膨らませ、空想のいきものを描きました。使用した絵の具も日本画材の中でも程度が低いものをあえて使用。大津絵で用いられていたものに近いです。


たぬきみたいな、ねずみみたいな。
元になった壁。ただの剥がれた壁ですが、私にはいきものにしかみえず、お宝のようでした。

アマニ紙の程よい厚みと、塵の混ざったムラ加減が肌にあい、非常に筆がノりました。和紙にありそうでなかった紙です。

イラストや絵本を作る感覚に似ていて非常に面白かったので、今後も展開できないかなと考えています。

反響

1週間という短い期間ながら、大変多くの方にご来場頂きました。ベビーカー連れの方からご老人まで、老若男女に観て頂けた貴重な経験でした。

今までの個展と特に手応えの異なる点は、地元や近隣の方々のご来場も非常に多かった事です。

市内中に展示ポスターやチラシを設置して頂けたお陰でもありますし、ビルがバスロータリーの目の前でもあり、ポスターを見かけた方がバスを待つ間に立ち寄られる、といったケースもありました。

また、在廊していると親子で絵の鑑賞を楽しまれる様子も何度か見かけました。

小作品を並べた中央卓の高さが子ども目線でも観やすかったようです。絵本作品も3冊置いていたので、そちらも読まれていました。


「双子のポンポン」
「盤盤池の子獏」

私の作品は動物(のようなもの)が描かれているため親しみをもたれやすいものの、わかりやすいかというと、決してそうではない(と思う)ので、ふらっと来た方々は程よく「なんだろう?」と思いながら鑑賞されていました。おもねることもなく、つきはなすこともなく、意図せず場所と作品とが噛み合っていたように感じました。

日本画ワークショップ

土日は会場内で日本画ワークショップも実施。小学生から大人の方までご参加いただきました。

自分の個展で日本画のワークショップという組み合わせは初めて。

内容は日本画の特徴である「岩絵具」の体験を検討していました。子どもでも楽しめて短い時間でできて、満足感も得て欲しい。これが意外と難しい、というよりも私が調べた限りだと前例がほとんどないのです。

色々と考えた結果、せっかくなので実際に展示されている私の作品と全く同じパネルに和紙を貼ったものを用意しました。

正確には、作品を描こうとしていたものや、描き途中で止まっていたもの。すでに絵の具も塗ってあります。

真っ白の上からではなく、「続き」から始まる事で、具体的なものを描かねばというプレッシャーを和らげて気軽に絵の具が乗せやすくなっています。すでに色が入っているので、絵の具の重なりによる面白さもある程度体験でき、気が付けば作品も出来あがる、という算段。

この読みは的中し、当日は大変盛況となりました。


低学年の子。白が大好きらしく、最後まで白い絵の具だけを使用。とても満足そうでした。
大人の方。3年間描きかけだったもの(横向き)が素敵な作品に。
低学年の子。できた絵を展示卓に飾ってみました。

「岩絵具」というものは「美しい絵」を描こうとすると非常に扱いが難しいのですが、そもそも絵の具自体が「美しい」ので、そこにフォーカスを当てると実は、ある程度ぐちゃぐちゃと絵の具遊びで描いても成立するのだと気がつきました。

アプローチ次第では、筆に慣れていない低年齢でも楽しめるという事は今回の大きな発見でした。

"日本"画という名前なのに、学校の図工美術では学ばない、という点も翻すと大人も子どもも平等に「知らない」とも捉えられるわけで、ワークショップとしてアプローチできる可能性はまだまだあるなと感じました。

まとめ

今回は作品量も多かったため、飾るまでどうなるか不安でしたが無事盛況に終える事ができました。ご覧下さった方々、本当にありがとうございました。

企画を担当して下さったスタッフの方々のサポートが非常に手厚くかったのも印象的でした。私の作品を非常に好いて下さった事もありがたく、嬉しく、こそばゆく。
スタッフの方々の楽しく作品を観られる様子や、節々から感じるクリエイターへのリスペクトの姿勢は本当に素晴らしく、今後展示をされるアーティストの方々に対しても、きっと心身ともに支えてくれるだろうという安心感があります。今後も魅力的な企画が続き、町田を盛り上げていくことを願っております。


パリコレッ!ギャラリー vol.31 小林大悟「ハポン イ メヒコ 日本⇆メキシコ、行き交う空想」

開催:2024年4月1日(月)〜8日(月)

展示概要
https://www.pario-machida.com/topics/event_archive/14303

インタビュー
https://www.pario-machida.com/topics/machida/14529

ワークショップの余談


私は描きかけで止まっている絵が結構ありまして、今回のワークショップで放出する事でその整理ができました。

参加者はある程度絵の具が乗った上から始められるので、短時間でも面白さを味わえる。

ワークショップ後に余った絵の具は、用意した無地のパネルに塗って、私の次回作の下地作りになる。

とても良い循環が見えました。無理なく継続できてエコロジーなので、またどこかでできたらと思います。

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