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C.G.ユングを詠む(014)-『赤の書』:PS『死者への7つの語らい(1916)』から

『死者への7つの語らい(1916)』から『赤の書』へ

ユング自伝2」の付録として収録されていている『死者への7つの語らい(1916)』
の感想を、『ユングを詠む(008)』~『ユングを詠む(013)』に書いた。

感想を書いたものの、第Ⅴ章(012)から第Ⅶ章(013)はほとんど何を書いてあるのかわからなかった。

⭕️C.G.ユングを詠む(008)-プレロマとクレアツール:『死者への7つの語らい(1916)』から
⭕️C.G.ユングを詠む(009)-神は死んでいない:『死者への7つの語らい(1916)』から
⭕️C.G.ユングを詠む(010)-至高の神:『死者への7つの語らい(1916)』から
⭕️C.G.ユングを詠む(011)-神と悪魔:『死者への7つの語らい(1916)』から
⭕️C.G.ユングを詠む(012)-教会と共同体:『死者への7つの語らい(1916)』から
⭕️C.G.ユングを詠む(013)-デーモン。人間。:『死者への7つの語らい(1916)』から

ユングを詠む

『死者への7つの語らい(1916)』はユングの死後に出版されたもので、生前の記録では書き直したいところがあったがその意志を実行できずに終わったと言う。

1942年4月10日にユングはマリー・メロンと言う人にこう手紙を出している。

「『7つの語らい』の出版に関しては、しばらく待ってもらいたいと思っています。
私は心中、ある素材を付け加えねばならいと思っているのですが、もう数年それをためらっているのです。
でも、こういう機会(『新たなる書』の出版のこと)にやってみるのもいいかもしれませんね。」
1944年、彼は大きな心臓発作に見舞われ、この計画は実行にうつされなかった。

P117『赤の書』
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と言うわけで、『死者への7つの語らい(1916)』が難解なわけである。

そして、『赤の書』とは『新たなる書Liber Novus』の別名である。
邦訳版の出版元である創元社のサイトではこう紹介されている。

半世紀もの長い眠りから目覚めた、C・Gユングの非公開の書
フロイトとともに、20世紀の心理学に大きな足跡を残したC・G・ユング。本書は、彼が16年余にわたって私的な日記として書き綴り、死後、半世紀ものあいだ非公開のまま眠っていた伝説の書物である。
そこには、ユング思想の中核をなす概念の萌芽が、ほぼすべて網羅されている。
美しいカリグラフィーによる文面、強烈なヴィジョンの体験を極彩色の緻密な構成で描きだした134点もの絵の数々。
ここに描かれているのは、人間の無意識の深遠なる未踏の世界そのものである。

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オリジナルはA3変形版と大きな本なので、私は縮刷A4版を手にしている。

3分の1ほど読んだ。

ほとんど、ユングの見た夢と内省の記録であるので内容がカオス!

ユング自身による自分の夢と内省で見たものの解説もついている。

また、編集したソヌ・シャムダサーニ氏がユングの講演・論文から解釈の参考になるよう長々とした注記もつけてくれている。そのおかげで、わかったような気になる部分もある。

そしてブラウズしてみて、最終3分の1には、プレロマ、クレアツール、アプラクサスについてかなり長く書いている。『ユングを詠む(009)』では生意気に、プレロマを「ありのままの存在」、クレアツールを「考える実存」と名付けたが、後日『赤の書』を読んで見直してnoteしたい。

前に、こう書いた。

プレロマとクレアツールについてもう少しわかりやすい言葉に置き換えてみよう。
C.G.ユングを詠む(008)の説明を別な言葉で置き換えたものを文末に掲載しておく。私自身は言葉を置き換えることで、ずっとユングの多分言いたいことが腑に落ちた。

プレロマとは一見矛盾というか、相反する概念を包含した存在、あるがままの状態と捉えたらいいというのが、目下の私の解釈。「ありのままの存在」ということにする。なんだかんだ言っても対立や矛盾を含み混乱・混沌とするのが現実。それを「ありのままの存在」という。

プレロマを「ありのままの存在」と言い換える。
ここであなたの心の中にしかないイメージや空想・妄想・誤解釈もあなたの中にあるということで「ありのままの存在」とする。

で、次はクレアツールは「考える実存」と言い換る。
クレアツールは言語ではCREATURで生物のこと。ユングは生物とは言い切らず訳のわからない説明をしている。ただ、実存主義の「実存」に近いように見受けられる。

実存主義者の実存という言葉に対する説明は色々と違っているが、私の感じる共通のイメージは、意識があるとか、意志があるとか、心があるとかいった存在にとれる。

例えばミドリムシやミミズでも生きようとする意志があるので実存と思う。実存と言ってしまうと、これまでの「実存」と区別がつかないので、わざわざ「考える実存」とした。

石ころや金属の塊のようなものは意識や意志や心があるようには見えないので、「ありのままの存在」になる。

ユングを詠む(009):神は死んではいない。
https://note.com/no1coach/n/n173d2f397b64

そして、ユングは『赤の書』の巻頭で1917年ごろの「無意識との対決」こそが、最も重要な時期であったと1957年に書いている。
その対決を徹底的に検討し直したとしている。検討し直した作業が『赤の書』に遺されている。
 
原文の邦訳はこんなだ。

あなた方に物語った、私が自分の内的なイメージを追求していた歳月は、
私の生涯において最も重要な時期であった。
他のことはすべてこの時期から導き出すことができる。
この時期から全てが始まったのだ。
したがって、その後の細かなことはほとんど重要でない。
私の全生涯とは、
この時期に無意識から突然現れて、わけのわからない大きな流れのように私を圧倒し、
今にも破壊してしまいそうだったことを、徹底的に検討し直すことであった。
それは、ただ一人の人生のためにだけある以上の素材である題材であった。
その後のことはすべて、
外的な分類、学術上の改訂、そして人生に統合することに過ぎなかった。
だが、すべてを含むヌミノースな始まりは。
この時期であった。

C.G.ユング、1957

『赤の書』
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だから、『ユングの生涯』の残りの章と、さらには『ユング自伝』の感想を書きながら並行して読んでいくことにしたい。混沌としてカオスな本だが。
 
次回は、『ユングの生涯』からユングと曼荼羅の予定。

『赤の書』で遺された”強烈なヴィジョンの体験”は、『ソース原理』で大切に扱われる”直感 ituition"につながっていく。

そして、これは生成AIには絶対にできないことだ!

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こころざし創研 代表
ティール・コーチ 小河節生
E-mail: info@teal-coach.com
URL: https://teal-coach.com/
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