第十四候 鴻雁北(こうがんかえる)
暖かくなった。雪柳が、真っ白な花を数えきれないほどつけている。春に咲く雪を、清流の上に投げかけている。
日永(ひなが)になった。凡(あら)ゆるものに、えも言われぬ陽光が永く降りそそいでいる。水面(みなも)にも、眩い乱反射となって照り映えている。反射のひとつひとつに心揺れる。
この季節、雁(かり)が飛び、花は咲き、水面は耀(かがや)く。凡(あら)ゆるものが過剰に眩い。悲しみを悲しんで偲ぶことを許されていないような心地もする。けれど、決してそんなことはない。
雁(かり)が北