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第二十二候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)

麦の穂が実り、小さく満ちる。卵から孵った蚕が桑を食む。世界が在り、自分がまだ死んでいないということを思う。

以前、読書会で「友人と深い部分で痛みを分かち合え、お互いの欠けがえの無さを想ったとき、もう死んでもいいと思ったことがある。今でも、音楽を心から愉しめたとき、同じ心地がする」と語ったことがあった。それに対して「生きていけるじゃなくて、死んでもいいなんですね」と応答してもらったことがある。

わたしは自分が死んでいないということを、世界がまだわたしを生かしていると解釈して世界観を構築している。それは生が与えられているというものではなく、死はまだ訪れていないという感覚に近い。


世界は在り、まだ私を手放さない。”手放さないのであれば“、その間は、自分がやりたいと思うことをする。音楽をする。哲学をする。自分が「まだ生きていてもよい」と思える世界を護るために自他の尊厳を守る。他者とより良く繋がるために、ひとりひとりの存在、人権が重んじられる場を求める。

いつか世界はわたしに終わりを与える。この世界が、悩む人、悲しむ人、苦しむ人、つらい思いを抱える人に、惜しみなく憐れみと慈しみを与えることを祈る。わたしたちひとりびとりに、1日でも多く穏やかな日々が与えられることを祈り、願い、求めていく。




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第二十二候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)
5月21日〜5月25日頃

蚕が孵り、桑をたくさん食べ始める時期
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参考書籍:
山下 景子(2013年)『二十四節気と七十二候の季節手帖』成美堂出版https://www.seibidoshuppan.co.jp/product/9784415314846

(初夏、小満・初候、第二十二候 蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ))

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