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旬ジャンルを体感し、思うこと

 スラムダンクは私のバイブルだ。
 初めて知ったのは小学生の時。CS放送であるキッズステーションというアニメ専門チャンネルでスラムダンクのアニメ再放送を見たことがきっかけだった。
 リアルタイム世代ではないため、周りの友達はスラムダンクを見たことがなかった。中高では別のバスケ漫画が流行っていたことを覚えている。
 それでも自分は「スラムダンクが好き」「好きな漫画はスラムダンク」と言いながら一人で楽しんでいた。それでもよくて、満足をしていた。スラムダンクは自分がわざわざ推奨しなくても既に最高峰の作品だと知っていたからだ。強要するつもりもなくて、自分は自分で井上雄彦先生の作品を嗜む青春時代を過ごした。

 令和──
 スラムダンクの映画が公開されると知った時はお祭り騒ぎだった。
 既に社会人になっていた私は同僚にも「スラムダンクが好き」と吹聴していたため「スラムダンク映画やるんだってね、おめでとう」などと、関係者でもないのに祝福(?)をしてくれたことを覚えている。
 楽しみで、楽しみで、公開される時を待った。
 その間に井上雄彦先生は画集第二段を発売した。発売日に購入をした。
 嬉しくて、待ち遠しくて、やっぱり好きだと実感した。

 そして令和四年十二月──
 公開初日の朝の回で映画を観に行った。
 そりゃあもう最高だった。動いている彼らがかっこよすぎて、改めて漫画やアニメを見返したいと思った。
 公開前、世間で拡がっていたスラムダンクの映画についての賛否両論。賛よりも否が目立っていた。私はそんなことはどうでも良かった。
 あの井上先生が手がけた映画。スラムダンク。観ない理由はなかったからだ。
 ところがどうだろうか。
 井上雄彦先生の実力が勝った。
 世間の評価はあっというまにひっくり返り、今度は賞賛の嵐だ。私は素直に嬉しかった。同時にこんなに綺麗な手のひら返しは初めて見たと面白がっていた。
 既にスラムダンクは神作品の地位にいた。リアルタイム世代の人、スラムダンクを知っている人はわかるだろう。
 しかし、映画を通して、スラムダンクを見たことがなかった令和を生きる民達にその良さが知れ渡った。
 その勢いは日本だけに留まらず海外にまで。素直に喜ばしいことであり、こうなることは当然だと思っていた。
 スラムダンクが令和に「旬ジャンル」となった。嬉しかった。最高だった。
 そのはずだった。
 なのに。
 人気と同時に発生すること。
 グッズが簡単に買えなくなった。
 チケットが簡単に取れなくなった。
 その「人気・勢い」から生まれる競争。
 私は焦った。
 グッズは初日にほぼ手に入れていたため、第一弾、第二段としっかり確保できていた。
 今度は応援上映。チケットは戦争だった。
 それから雑誌が出た。
 買うことができなかった。
 たまたまその週の仕事が忙しく、すっかり頭から抜けてしまって発売日を逃したのだ。これが「一巻の終わり」だった。
 雑誌だし、増刷されるだろうと、軽い気持ちで考えていた。増刷、再販予定はもちろん未発表。
 本屋を何軒か梯子した。無かった。
 それどころか、映画が始まる前から今年二月くらいまでは普通に積まれていた画集が店頭から消えていた。
 私は何故か怖くなった。
 ああ、爆発的に人気になるというのはこういうことなのか、と。
「旬ジャンル」の渦中を体験した。
 そして発生するのが転売ヤー。転売ヤーの買い占め、価格の高騰。
 その日を逃したらもう手に入らない焦り。
 大好きなのに、プレッシャーが付き纏ってきた。
 そうなるとどうなるのか。私の場合は段々と疲れてきてしまった。
 こんなにずっと好きなのに、少しの油断で自分にはチャンスが来なかった。自分がいけないことはわかってる。発売日をしっかり頭に入れて朝から頑張って買った方もいるだろう。予約さえしとけば良かったんだ。ナメていた。落ち度だった。
 そしたらどんどん落ち込んでくる。何かグッズが発売したりイベントがあっても次は行けないかもしれない。買えないかもしれない。ああ、もうダメだー。人気過ぎる〜、、、と。なんか人多い〜ライバル多い〜、、、、と。
 「競争に勝てない怖さ」「しっかり後を追わないといけないプレッシャー」が常に付き纏っていた。
 己が好きな作品が人気なことは良いことで、作者や作品に携わった方々の地位や名誉、富になればそれが最高で、それだけで良いわけで。
 わかってるのにもやもやが止まらなくなった。
 今までだって最高だったよ?
 なんで今更。
 いやいやいや、いきなりなんなん。
 ミーハーかよっ!!
 どうせすぐ別ジャンルいくんでしょ、、、
 もうちょっと落ち着いてよ。
 ………こんなクソ感情がイヤすぎる。自分がイヤなやつになるだけでさらにイヤになった。
 人気が爆発する。
 上述の通り、作品が更に世間に認められてゆくということである。良いことでしかない。
 本当に最高なことなんだよ。
 知らなかった層がハマる。古参とか新参とかリアタイ世代とか、そんなんどうでもいい。
 どんどん拡大するファン。
 最高。もしかしたらもっとグッズ出るかもしれないし。もっとイベント出てくるかもしれないし。だから自分にとっても最高でしかないのだ。
 ずっと夢だった、リアルタイムでスラダングッズを買うこと、リアルタイムでスラダンイベントに参加することができるのだから。
 最高しかないよ。
 ただし、転売ヤーを除き。
 
 だけどもう少しさ、、、なんだろう。
 マイペースに、落ち着いて、推し活をしたいんだ。楽しいだけが良いのに、焦りや不安で楽しくなくなってしまっている。こんな気持ちは自分だけかもしれない。
 じゃあヤメレば?
 と言われたらぐうの音も出ない。
 そうすよね…というしかない。やめないけど。
 折れそうになる。「折れないけどね(安西先生)」。
 だって本当に好きだから、好きだからこその苦しみなんだよ。
 沼で溺れているような状態だ。
 旬ジャンル怖ぇ…ってよくツイッターとかで見てたけど、本当にそうだった。
 そして思う。
 旬ジャンルにハマってゆく人達って本当に大変だし、すごいなと。しかし転売ヤーテメェらはスゴくねぇからな。
 あと転売ヤー以上の罪。もはや法に触れているヤツ。画集とか漫画を写真撮って平気でツイッターとかにアップするのやめてくれ。後で消すとかの言い訳もクソ。
 アナタは何をしてくれちゃってんですか。
 何よりも作者・作品に対するリスペクトが無い行動。
 いいね稼ぎたいんだろうね。承認欲求の鬼。炭治郎に滅されてくれ。
 旬ジャンルは増える。転売ヤーと無断転載マン。
 許さん。

 スラムダンクのこのビッグウェーブ。
 果たして更に盛り上がるのか、下がってゆくのか。わからないけれど、今「旬ジャンル」スラムダンクを好きでいて思うこと。

 何よりも大切なことは、

「至急予約」



追記

 仙道彰がイノタケクオリティで動いて令和のCVついたら世界割れるくらい人気出ると思う。






 


 






 

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