青空文庫新着分より大下宇陀児「偽悪病患者」読了

短編。

絶世の美男子、佐治は女性を不幸にし、犯罪計画を自ら露呈する類いの偽悪病患者である。

病弱な夫と暮らす妹に手紙でそう警告する兄だが、当の妹は佐治を遠ざけるでもなく、最賀なる夫の後輩をお目付け役として呼び寄せるに留める。

やがて短い電報にて悲劇が報されるが……。



文を寄越さなくなる妹に兄の不安が膨れ上がる様子や、逆に兄からの返信が途絶えて悲嘆に暮れる妹の文章など、往復書簡形式ならではの構成の妙が光る。

小粒ながらも犯罪小説の醍醐味は堪能できる。

当時の電話に関する推理の根幹部分はさすがに時代を感じるが、兄と妹の文体の対比など、今でもSNSのメッセージで代用できそう。

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