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諸星大二郎『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』

かのミステリ文芸誌『メフィスト』に掲載された連作を収めたもので、単話メインのシリーズにしては一冊丸々ストーリーが繋がっている珍しい作品。

"天狗の宝器"の謎を追って危険な山に登り、奇妙な女性に導かれ〈モノ〉に名を付けた者たちのその後を描いた怪異譚集。

魔と名付けた考古学者、神と名付けた宗教オタク、故人の名を付けた女性、三者三様の末路にストーリーテリングの妙を見る思いだが、ピークは唯一名を付けなかった稗田氏が主役の四章と終章。

三輪山周辺に関する考古学的見解を交えつつ、後述のパンク教祖ご一行と愉快な珍道中を繰り広げる。



二章にて初登場のモヒカンサングラスに和服姿、ライブハウスにてラップでご託宣を披露する異形の教祖岩田狂天。

ここで退場はもったいないと思ったら、稗田氏の後日談にて信者らと共にしっかり再登場。

キャラ立ち甚だしい霊能者とあって、完全に主役を喰う大立ち回りを演じてくれる。



最終盤、稗田氏による総括がカッコいい。

「神……魔……人……どんな名を与えようと人間の社会にそれを受け入れる素地がなければモノは生き延びられない…」

「"神"は山に帰り"人"は悩んで滅び…魔だけが残ったってわけだ…」

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