諸星大二郎『徐福伝説』
四編のうち冒頭の「徐福伝説」のみ既読。
かのテレビゲームにまでなった名作『暗黒神話』の単行本に併載されていたのだ。
秦代の方士・徐福の目指した蓬萊が、もし太古の日本だったらという着想の下に繰り広げられるのは、まさかのうら若き男女らによる愛憎劇。
久方ぶりの再読で、新たに気づいた点が一つ。
この作品で最も輝いているのは誰か。
それは主役の顔青でもヒロイン精衛でもなく、ましてや徐福でもない。
そう、文字通り顔青にあて(宛)がわれた宛若ちゃんなんだよ!
彼女の魅力を発見できただけでも読み直した甲斐があったというもの。
残る三編は、マッドメン関連の読切「マッドメン」「鳥が森に帰る時」と、未来のアメリカを舞台に幕末の日本とジョージ・オーウェル的ディストピアをカリカチュア化した「マンハッタンの黒船」。
ホラーともギャグとも取れる秀逸なラストの「マッドメン」だが、続く「鳥が森に帰る時」ではタイトル通り森に帰り、波子と別れることになるコドワ。
文明の進歩と伝統ある部族の信仰は、そう簡単には歩み寄れない。
最後の一編は、出オチな割に大統領の正体など結構凝った内容で、諸星先生も楽しく描き上げたのではないかと。
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