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テレワーク時代のユーザーテストに最適💻 Clarityでユーザーのイライラを把握してUXを改善しよう(実践編)

前回はMicrosoftが提供する無料のUX解析ツールClarityの概要編をお届けしました。
今回の実践編ではClarityのデータを活用してユーザーがどこでどう迷っているのかを読み解く方法の解説と、DATA STRAPで実際に導入し、改善施策に繋げた事例をご紹介したいと思います。

困っていそうなユーザーを探そう

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画面上部のRecordingsというメニューに入ると、左側にユーザー毎の行動履歴を記録した動画が並んでいます。
ここにはセッションの長さ、クリックの回数、デバイスの種類、国といった属性がありフィルタリングに利用できます。
フィルタでDead clicksやRage clicksなどで絞り込むと困っているユーザーを発見しやすくなります。
では実際に改善に繋がった事例をいくつかピックアップしてみましょう。

ラジオボタンの初期値の見直しでクリックコストを削減

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広告成果のレポート画面において集計単位を設定する場面です。
ここの操作を眺めていると多くのユーザーが「日別」を選択していることが分かりました。
しかし、我々はラジオボタンの初期値を「合計」にセットしていたため、わざわざ日別をクリックし直さないといけないのです。工数削減を謳っていながらこの操作のために労力がかかってしまうのはもったいないですね。
⭐ということで、初期値を「日別」にすることで1クリック削減です。

閉じるボタン以外の領域でも容易に閉じられるようにして快適性向上

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画面下からせり上がって来るモーダルビューを閉じる時のアクションが、我々の想定と違い、上部の僅かな隙間をクリックすることで閉じるユーザーが案外いたという事例です。
iOSユーザーにはお馴染みの見せ方で、上部に隙間を与えることで画面が1枚上に被さっていることを表現しています。
右上にはバツマークの閉じるボタンがありますが、全体の面積だと隙間よりも狭いんですよね。ゲームのようなシビアな操作性を求められるとユーザーは途端に使いづらさを感じてしまうので、このユーザーさんはクリックしやすそうな隙間の方を選んだのかもしれません。
しかし、縦幅が絶妙に短いため何度かクリックをミスっていました。地味にフラストレーションが溜まりそうです。
なのでこの縦幅をもう少し広く確保することでクリックミスを減らしました。

未知のScriptエラーを発見

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ClarityにはScriptエラーの検知ができるという便利機能もあります。
画面下部のシークバー上の赤い目印がそれです。ユーザーの操作を見ながらエラー時の前後の挙動が確認できるため手元での再現もやりやすいですね。
これのおかげでカレンダーに存在していた未知のバグを発見することができました。

積み上げグラフのカラーバリエーションを変更して識別性向上

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ダッシュボードの売り上げを示す積み上げグラフは、初期デザインではDATA STRAPのテーマカラーであるブルーを基調としたグラデーションでした。
一見キレイなんですが、内訳をしっかりと判別できるほどの識別性がありませんでした。色弱の方への配慮もできておらず低アクセシビリティな設計であったわけです。
動画ではマウスをグラフにフォーカスさせて一つずつ内訳を確認している様子があり、ユーザーさんにその代償としての負荷をかけていたような格好になっていました。
現在は見やすさを優先したカラーバリエーションに変更し、ユーザーさん達に行ったアンケートで「見やすくなりました」という回答を多数いただけています。

リモートワーク時代のユーザーテストに使えるのでは

これまでのユーザーテストと言えば色々な準備と手間暇が必要でした。
ユーザーへの協力依頼に始まり、スケジューリングや段取りなど運営側の労力に加えて、協力してくれたユーザーには協力金などのインセンティブを付与するのが通例でもありました。
しかしClarityを使えば勝手に複数の操作履歴がたくさん蓄積されるのでコスパの良いテストができます。
こちらの指示に従ったテストとかはできませんがそれを差し引いてもお釣りが来るくらい有益なツールでしょう。

そしてこれまでの画面キャプチャを見ても分かる通り、センシティブな情報は●マークで自動マスキングされるためフォーム入力時のプライバシー保護の観点からも安心です。(設定でより強固にマスキングすることも可能)

最後に

Clarityはまだまだ歴史の浅いツールですが、無料でここまでできる凄さに圧倒されながら便利に利用させてもらっています。
カスタマーサクセスを掲げる我々DATA STRAPでも、お客様の声なき声を拾い上げる手段として活用し、日々の改善に役立てていけそうです。

紹介しきれなかった使い方はまだまだたくさんあります。無料で誰でも使えるツールですから、是非気軽に試してみてください。