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「入管法改正案」廃案、それから

5/17、「入管法改正案」の実質的廃案が決まった。

今国会での法案の採決が取り下げられた。
世論が勝ったんだ、「絶対に負けない」と誓いつつも、こうして形になることでその力、社会の声の力がドン、と胸に迫ってきた。

5/16、私は初めてデモに参加した。
そして、壇上に立たせていただいて、TRYとして約3分ほど、お話しする時間をいただいた。

今日、名古屋ではウィシュマさんの葬儀が行われています。支援者として、心から哀悼の意を表明します。

私たちは、彼女の死を絶対に無駄にしてはいけないと思います。
今、日本社会でウィシュマさんの死、そして法案改正について注目が高まり、入管が出した中間報告の中に次々と不審な点が浮かび上がっています。
当時継続的に支援を行なっていた支援者からの報告を聞くと、彼女は必死に収容所の中で生きる術を探していました。必死に私たちに助けを求めていました。彼女がどんな思いで、収容所の中で過ごしたのか、考えれば考えるほど、胸がつまる思いです。

彼女の死は、私たちが今後どのような社会を目指していくのか-彼女のような境遇の人の人権まで踏みにじる社会にしてしまうのか、そういうことが問われていると思います。

私たちは事件の真相究明を徹底して追及し、二度と同じようなことを起こしてはいけません。

今、修正案なども出されているが、小手先の修正で良くなるような法案ではない、妥協では彼女の死に報いることはできないと思います。廃案一本で闘っていきましょう。

(▶️ビデオ)

「#入管法改悪反対」を掲げ、約2kmの道のりを静かに歩いた。先月、TRYの面会活動を取材してくださった記者さんとも顔を合わせることができた。

今回のデモには、5/5に行なわれたデモに参加した約2倍の数の人びとが参加した。雨が降っており、呼びかけたのは5日前だったにもかかわらず、だ。

この法案に対して、なぜこれほどまでに注目が集まり、反対の声をあげる人が増えていったのか。





私は、ある人にこの問題について話した時、こんなことを言われた。

「あなたがもどかしい気持ちは分かるし、間違っていることをしているとも思わない。だけど、世の中の問題は数え切れないほどあって、やっぱりより多くの人が関わる問題が優先になってしまうよね。国の決定に影響を与えようと思ったら、国会議員ぐらいにならないといけないんじゃないかな。」

この意見の是非を問いたいわけではなく、事実としてこの意見があるのだ、と、そのことを思い知らされた瞬間だった。

もちろん私の伝え方に問題があったのは重々承知の上だけど、私がこの入管問題を自分も当事者の一部であると考えるようになったのは、ただ「弱い立場の人」の「救済」のために行なっているのではなく、「自分が生きている社会で、国が権力を使って、ある一部の人間を括って抑圧・差別していること」が許せないと思ったからだ。

だから、入管問題とコロナの問題は繋がっているし、女性差別も障害者差別も、貧困の問題も、就活も労働者の問題も、沖縄問題も原発問題も、全てが繋がっていて切り離すことはできない。

そして、今回廃案につなげることができたのは、当事者が声をあげ、支援者が声をあげ、そして市民が声をあげたからだ。紛れもない、私たちの力だと思う。

野党が修正案を出してきた時、そのことをつよく確信した。


この人たちを動かすのは、社会だ。
メディアを動かすのも、社会だ。

今回の件で、収容所の実態、そして日本の難民受け入れ態勢について知った人は多いと思う。

ウィシュマさんが亡くなったのも、今回に限った話ではないだろう。先日、Choose Life Projectの配信で、当時ウィシュマさんと面会していた学生支援者からこんな報告がされた。

「名古屋入管での処遇は未だ改善されていない。現在2〜3日食べられない状態が続いてる人に対して、入管は単独室にいれた。しかし、単独室ではトイレやシャワーのために職員を呼んでも来ない。結局自分一人で何でもしないといけない。その人は単独室を拒否し、共同部屋に戻った。入管にその後どうするつもりなのか尋ねると、"明後日まで食べられない状態が続けばまた単独室に移す"と。状況は変わらないどころか悪化しているのではないか。」


入管は、未だウィシュマさん遺族に対しても「調査中」であることを理由に謝罪をすることなく、質問に対してもまともな回答をしていない。

まるで「人を死なせたこと」に対する重みがない。
入管の体質は依然として存在している。


法案が廃案になっても、ウィシュマさんは生き返らない。ご遺族の傷は癒えない。これまで理不尽に失われてきた生命も、もう戻ってこないのだ。


廃案、その先はいったい何なのか。
「彼女が生きていけたかもしれない社会」とは、どんな社会なのか。

あまりにも大きすぎる入管の権限と裁量によって今回の事件が起こったと言っても過言ではない。
「外国人は厄介な奴らだ、犯罪者予備軍なんだ」という偏見のもとで独断的な判断を施し、それを決定に持っていく権利さえ、入管は持っている。

それらの権力を分散化・縮小させる法案、制度を整えること。刑務所にさえある、第三者機関を設けること。

そしてそれ以前に、国際基準に基づく難民受け入れ、そして在留資格の大幅緩和をしていくことは、今ある法律のもとでも十分できることだ。





昨日、難民問題に関する議員懇談会が東京で開かれた。そこにはウィシュマさんの遺族、国会議員、そして学生支援者も招かれ、意見を述べる場が設けられた。メディアも多く参加した。TRYからも支援者として、学生メンバーが参加した。

関西で支援しているTRYも、廃案というところで本当に良かったと思っています。
しかしウィシュマさん事件についての真相究明を、遺族が納得するような形で行うことを、TRYからも強く求めます。

このような事件は、名古屋入管だけに特徴的なのではなく、現状を見れば、全国の入管で起こりうることです。
TRYが面会活動をしている大阪入管でも、ご飯を食べることができず、1ヶ月弱で8キロも体重が減った方もいました。その他にも、眠れないほどの腹痛を訴え、外の病院に行きたいと言っても、全然病院に連れて行かず、痛い、と言ったら症状に関係なく同じ痛み止めを、眠れないと言ったら精神安定剤を、適切な診療もなしに処方して、被収容者を薬漬けにしています。入管の医者は、被収容者に対し、「国に帰れ」と言ったそうです。被収容者は悪いやつだ、もっと言えば、死んでしまってもいいんだ、そういう意識で入管医療が行われています。こういう現状の中で、被収容者たちは会うたびに弱っていっています。
入管には収容主体責任として、被収容者の健康を守る義務がある。現状から見て、それは全く果たされていません。
STARTの方からも述べられた通り、現在全国には約3000人の仮放免者がいます。その中には、仮放免が20年、また10年を超える人もいますし、未成年の仮放免者とその親もたくさんいます。こうした人たちを、難民認定や難民在特、在留特別許可の大幅緩和によって救済すべきです。
国家の機関によって、外国人の生存権をも奪うようなことが行われていることを、日本人として、許すことはできません。わたしたち学生は、すべての人間が、人間らしく生きることができる、そういう誇りを持てる社会を作り上げていきたいという思いで活動しています。
まず多くの人にこの問題を知ってもらい、今の入管の現状を暴露し、日本社会全体で議論をしたいと思っています。
そして改めて、ウィシュマさんの事件についての真相究明を求めます。そして、このようなことが二度ど起こらぬよう、現状を抜本的に変えていく活動をしていきたいと思います。

(▶️動画)

やっと、スタートラインに立てたのだと思う。
私たちには、社会を動かせる力がある。

この現実を知った今、ここがスタートなのだ。

これからも、声をあげ続けていく。
私たちには、変えることができる。

絶対に、絶対に彼女の命を無駄にしない、私たちにはその責任がある。

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