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働きたくないイタチと言葉がわかるロボット〜人工知能から考える「人と言葉」〜

前回の江戸の話から一気にタイムトラベル。今回は近未来のAIのお話。

今回の推薦書は“働きたくないイタチと言葉のわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」”です。

なぜAIは、囲碁に勝てるのに、簡単な文がわからないの?そもそも、言葉がわかるって、どういうこと?中高生から大人まで「言葉を扱う機械」のしくみと、私たちの「わかり方」を考える。

本書は、なんでも言うことを聞いてくれるロボットを作ることにした怠け者のイタチたちを主人公に、「言葉が分かる」という言葉の意味を考えていくことで、機械のこと、そして人間である私たち自身のことを探っていきます。——(問題の一部を知るだけでも)みなさんが、「人と機械の知性」について考えたり、またご自身の「言葉の使い方」や「理解の仕方」を振り返ったりする手がかりになると信じています。 〜帯文より〜

人工知能(AI)の可能性を探る「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトがあります。この研究の中で分かった事。それは今あるAIには“意味がわからない”という事だったそうです。

たとえば、リスニングの精度は95%くらいあっても、リスニングの試験で満点が取れなかったのは選択肢がイラストで描かれていて、それがさっぱり理解できないというオチだったそう。

それなら常識をたくさん入力すれば良いのではないかと予算を費やして試みたそうですが、それでも世界で一度も成功したことがないそうです。

常識こそ統計によって形成されていそうですが、実際にはそんなに簡単ではなく、もしも英語のテスト問題で会話文の欠けている部分に適切な単語を四択で東ロボに90%の正解率を出させるためには、ナント五百億ぐらい会話文を勉強させないとダメだとわかったそうです。

人間なら百くらい見ればわかりそうなのに、ディープラーニング(十分なデータ量があれば、人間の力なしに機械が自動的にデータから正解を導く学習方法)を研究している人たちは、ニューラル(神経)ネットワークで人間の脳と同じようにコンピューターが考えられると思っていたそうですが実際にはそんなに簡単ではないというのがいまの人工知能の研究成果だそうです。

本書でもイタチは自分たちの言う通りに動いてくれるロボットを作るために、モグラが開発した“ロボットの耳”を買いに行きます。その“ロボットの耳”は標準語ならばっちり聞き取ってくれてもイタチ村出身のローカルタレント、ヨカバッテン板橋の方言はまったく聞き取れなくなります。

さらに言葉が聞き取れても、話し手の意図をくんだり、単語の意味についての知識を蓄えたりと普通に話していることをロボットにやらそうとするとまだまだ解決しなければならない問題はたくさんある。

逆を言えば、人間に「論理」があって「意味」さえ分かっていれば AIは恐れるに足らないという事。しかし“机の上にコンピューターがある”という意味は分からない人はほとんどいないけれど、“新しいコンピューターの取扱説明書”の意味が分からなければ操作できないのと一緒で“意味が分かる”というのは、実はボクらにとっても身近にある事なのかもしれません。

人間関係でも、上司や先輩が言っている意味が分からない事も多々あるし、“意味”って人間にとってもムズカシイ?

ちなみに、iPhoneのSiriに“意味って何?”と聞いてみたところ、「Webで“意味って何”に関する情報がみつかりました」と答えてました。

人工知能がドラえもんになれる日はやっぱり22世紀までお預けなのかもなぁ…


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