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澤野工房物語〜下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ〜

来年(2019年)から消費税が10%になるそうです。
食料品などの生活必需品は今と同じく8%の税率のまま(軽減税率)が導入されるそうですが、お弁当など持ち帰るなら8%、店内飲食なら10%などいろいろとややこしそう。また世界的にキャッシュレス決済が遅れているとして、キャッシュレス2%ポイント還元の仕組みなど中小企業にとっては逆風が吹くのではないかとニュースは伝えていました。しかし時代の流れの中、大阪・新世界に20年続く下駄屋さんが始めたジャズレーベルがあるのをご存知ですか?
ジャズを商売にして40年、レーベル20年。そのコツと秘訣とは?今回の推薦書は“澤野工房物語 下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ”です。

音楽の聴き方が大きく変わりつつあるこの時代に、ストリーミングやダウンロード販売をせずCDやアナログ盤などのフィジカルメディアにこだわり続け、ポピュラーミュージックに比べてもかなりニッチなジャズという市場で、しかも手っ取り早く売り上げを見込めるベスト盤やコンピレーション盤を商品にせず、しかも新譜リリースする際に広告を出さない。ただでさえ、AIやロボットに人間の仕事がとって変わられると騒がれる時代に、著者で店主の澤野由明さんの信念が素晴らしい本書。

できるだけ“小さく”ありたいと会社が小さいことの利点は3つ挙げていて内容は下記の通り。
●フットワークの軽さ
気に入ったミュージシャンと知り合ったら「音聴かせて」とお願いして気に入ったら「契約させて」。
●大企業のように部署が分かれていない
大企業だと、制作部は質の管理、営業部は売ることだけを追求し、お客さんの生の声は、だいたい営業マンのところで止まってしまうが、自分自身が作り手であり、セールスマンであり、ファンでもあるため、お客さんが何を求めているのかがよく見える。
●たくさん売らなくていい。
本当にほしい人だけ買ってくれたらそれでいい。お客さんはリピーターが多く新譜が出たら視聴もせずに買ってくれる。
そういうお客さんがいるおかげで、口コミで新規のお客さんも増えていく。だから広告費にお金をかけずに、その分を制作費に回せる。
ここだけを抽出すると簡単に思うかもしれないけれど、こうなるまでには日々の努力と何よりジャズを好きでいることを諦めない事がベースになっている。

澤野さんは言う。
“これからの時代、最大公約数的な商品ってあり得ないと思うんです。みんながみんな同じ方向を向くことは絶対ないのだから、こちらを向いてくれる人にだけはきっちり届けなければいけない。〜中略〜 だからこそ「発信する情報を誰に届けたいのか」を正確に見極める必要があると思います。そのためにはできるだけ小さくあり続けることが、チームとして重要になるわけです。”
これからは、“副業”ではなく、“複業”の時代とも言われていますが、この本には好きな事を長く続ける知恵と勇気が詰まっています。

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