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君は永遠にそいつらより若い

こんにちは。

今回は津村記久子さんの「君は永遠にそいつらより若い」の読者感想文を書いていこうと思います。

作品のご紹介

大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたなな日々を送る主人公ホリガイは、身長175cm、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来きし、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる......。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。

感想

まず、読み終えたときに思ったこの本の第一印象ですが、「つかみどころのない本だな」と思いました。

内容紹介にもあるように、「暴力」「哀しみ」、そしてタイトルの「君は永遠にそいつらより若い」の意味を考えながら読んでいきましたが、あっさり終わってしまったというのが正直なところです。

ただ賞を受賞するくらいの本ですから、何か筆者の隠されたメッセージがあるのではと思い、再考してみました。

そこで見えてきたのが、「日常」「非日常」、そして「傍観」「行動」という対比です。これがキーポイントかなと思いました。

この本は主人公ホリガイの何気ない「日常」をベースに進んでいきます。大学での学生生活、ゼミの飲み会、バイト先での出来事などがそれです。多くの大学生がこんな感じの日々を過ごしていますよね。

しかし、時折、「暴力」的なシーンや思いがけない事実を知ったときの「哀しみ」の描写も描かれています。これは普段ではあまりないことですから、「非日常」と言うことが出来るでしょう。

でも、このような「暴力」や「哀しみ」って私たちの「日常」の中にもきっと潜んでいますよね。

例えば学校のいじめはどうでしょうか。あの子がいじめられていることは知っているけど、私には関係ないから、とか、他の子がなとかしてくれるだろう、とか。当たり前のように学校に行く「日常」ですが、このようなことは起こっているのです。私たちの多くは「傍観」、言い換えると「見て見ぬふり」をしているのです。

ホリガイもそのうちの一人で、中々「行動」を起こせずに後悔をするシーンがありました。

しかし、物語の終盤にホリガイは「行動」を起こします。ホリガイは一人の子どもを救うのです。彼女自身には直接的に関係のない子どもです。

あることが理由で救助することになるのですが、普通はそこまでするでしょうか。自分には関係のない子です。物語の中でも、ホリガイは友達の吉崎君に、なんでそこまでするんやと止められます。恐らく大衆の声を吉崎君が代弁していますよね。

それでもホリガイは一歩を踏み出しました。見て見ぬふりをする自分や社会を振り払い、「行動」していったのです。

これは勇気のいることですよね。特に日本だと集団や仲間という概念がかなり強く、そこから離れて、マイノリティーになるというのは中々出来ることではありませんよね。

このような状況になったときに、あなたならどうするか。この作品にはそんな筆者のメッセージが含まれているかなと思いました。

そして物語の最後にホリガイは私たちにエールをくれました。君(私たち)は永遠にそいつら(あーだこーだ言う人)より若い(行動できる力がある)と。

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小説は十人十色の読み方が出来るので、それがいいところですよね。

最後までご覧頂きありがとうございました。

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