わたしの愛するかわいい人


これまで、あんなに可愛らしいひとに出会ったことがない


クラスのマドンナだったあの子だって、綺麗なモデルさんだって、わたしの愛するあのひとには敵わないだろう



わたしのおばあちゃんは、とにかくかわいい


毎日お洒落を欠かさず、お化粧もスキンケアからばっちり

若い頃からの積み重ねで70を超えてもシミが全くないのを見ると、日焼け止めさえサボってしまう自分を内省する

お気に入りの洋服やアクセサリーを褒めると

「そうでしょう、これは20年も前におじいちゃんが買ってくれたものでねぇ~」

と、とても嬉しそうに話してくれる


おばあちゃんはものをとても大切にする

ただとっておくだけではなく、おばあちゃんのもとで大切にされたものたちはより輝いて見える



おばあちゃんはおじいちゃんのことがとても好きらしい

愛情があるのは分かるが、孫からしたらとても厳しく、おばあちゃんに強くあたる姿も何度も見てきたから、正直信じがたい

それでも一度たりとも反論することはないし、どんなにひどいことを言われてもわたしたちに愚痴すらこぼさない

「こうして孫たちに逢えたのもおじいちゃんのおかげだからね」と優しく笑う

2人にしか分からない深い絆があるのだろう



おばあちゃんはおもてなしがとても上手

自分は食べないのに、時々こうして遊びにくる孫たちやお客様用にお菓子は幅広いラインナップで用意されている


あるとき、わたしがおつまみのピーナッツを見つけて「これ食べていいかな?」と聞くと、その袋の中身をとても美しい形状の小皿に移して小さなスプーンを添えて出してくれた


出てきたピーナッツは、姿を変えていてあまりにも美しい


感動で、胸を打たれた


もはやそれはスーパーで売ってる三角の個包装で80袋程詰められている最高コスパお菓子の”おつまみアソード”の一員ではなかった


一粒の値段があまおうくらいするのではないかと思わせる風貌


「わたし普段、袋からそのままぼりぼり食べてるよ」とは言えなかったし、巷で言われる”女子力”ってこういうことか~と50歳以上年上のおばあちゃんに100-0で敗北


おばあちゃん、すごいよ

華の10代、20代なんてうそよ。完敗だよ


「手が汚れるのやだな~めんどくさいから触れる部分の手の面積を最小限にしよう」なんて思いながらだらしない格好で食べるはずの時間が、おばあちゃんの一工夫で優雅なティタイムに変わった

匠のあの音楽が脳内に流れ出す



数年前に認知症になったおばあちゃん

わたしたちのことは時々忘れてしまうけれど、変わらず優しく微笑んでくれる

可愛い洋服を褒めると、少し照れながらもとても嬉しそうに「ありがとう」とお礼を言う



ちょうど今の季節のようにあたたかく、誰に対しても分け隔てなく心遣いができる人

いつまでもかわいいわたしのおばあちゃん



わたしは決めたんだ

これからおばあちゃんのように、年を重ねていきたい




あ、あと、おつまみピーナッツは小皿に出して食べてみようかな



わたしの愛する、かわいいひと。








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