百寿者の腸内細菌叢に見られる若さに関連したシグネチャー

2023年4月13日 09:02

発行：2023年4月6日
百寿者の腸内細菌叢に見られる若さに関連したシグネチャー

https://www.nature.com/articles/s43587-023-00395-0

Nature Aging (2023)この記事を引用する
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その結果、百寿者の腸内細菌叢は、Bacteroides属の優位性、種の均等性の増加、潜在的に有益なBacteroidetesの濃縮、潜在的な病原体の枯渇といった、通常若年者の腸内細菌叢に関連する特徴を有することが判明した。
質問
ヒトの腸内細菌叢は、老化プロセスや老化関連疾患1（例えば、糖尿病や癌など）の原因や発症に重要な役割を担っています。通常、慢性疾患に対する感受性が低下している百寿者は、腸内細菌叢が健康的な老化にどのように寄与するかを研究するための模範的なモデルである。百寿者では、老化に関連する特定の腸内細菌（例えば、Akkermansia属やChristensenellaceae科）が豊富であることが確認されている2。しかし、これらの先行研究では、サンプルサイズが限られており、縦断的な設計がなされていないため、その結論や説明が損なわれている可能性がある。腸内細菌叢が長寿とどのように関連しているかを理解するためには、さらなる証拠が必要である。我々は、中国南部の広西チワン族自治区の百寿者297人を含む1,575人の大規模コホートにおいて、腸内細菌叢の縦断研究を実施した。百寿者の腸内細菌叢の老化パターンを探り、腸内細菌叢がこれらの人々の健康的な老化と関連しているかどうかについての洞察を得ようとしました。
発見された
百寿者と20～85歳および90～99歳の個人からなる他の4つの対照群から糞便サンプルと健康情報を収集し、16SリボソームRNA配列決定を行って腸内細菌叢のシグネチャーを特定し特徴づけを行いました。百寿者の腸内細菌が加齢とともにどのように発達したかをさらに探るため、297人のコホートから無作為に選んだ45人の百寿者を対象に縦断研究を計画し、1年半間隔で糞便サンプルを採取して微生物の構造、組成、多様性を比較しました。
研究対象者の腸内細菌叢から4つの異なるエンテロタイプが同定され、百寿者はバクテロイデス属とエシェリヒア・シゲラ（Escherichia and/or Shigella）属の組み合わせによって特徴づけられるユニークなエンテロタイプパターンを示し（図1）、それぞれ若年層（20～44歳）と他の高齢者群で優勢であった。その結果、百寿者の腸内細菌叢は、バクテロイデス属の過剰発現、種の均等性（群集中の各種の数がどれだけ近いかを示す指標（均等性が高いほど、種の存在量が同程度であることを示す））の増加、バクテロイデス門（現バクテロイダ綱）の潜在的有益種の充実、病原性常在菌（特定の状況下で病原性を発揮できる無害な常在菌）の枯渇という若い成人と同様の構造を有していることがわかりました。また、Bacteroides属に支配された腸型（特に、有益なBacteroides属に富む腸型）は、百寿者を他の高齢者と区別するための特徴になり得ることが示唆された。例えば、腸の恒常性と共生を維持するために重要なBacteroides thetaiotaomicronは、百寿者に濃縮されています。先行研究3とは対照的に、健康状態は、百寿者と他の年齢層との間のマイクロバイオームシグネチャーの変化の方向性に対して、多少の変化をもたらすかもしれないが、有意な影響はないことがわかった。私たちの縦断的研究により、百寿者のマイクロバイオームパターンは、加齢に伴う腸内細菌叢シグネチャーの若さに関連した特徴を維持または強化することがさらに明らかになりました。私たちの大規模な横断的・縦断的研究は、百寿者のユニークな腸内細菌シグネチャーを特定し、これらの若者に関連する特徴が健康な老化と長寿に寄与する可能性を示唆しています。
図1：百寿者の若さに関連する腸内細菌シグネチャー。
a, 同定された腸型（E）は、Bacteroides属（E1）、Escherichia-Shigella属（E2）、Prevotella属（E3）、Blautia属（E4）の優位性によって特徴づけられます。各クラスターにおいて、楕円はサンプルの3分の2を含んでいる。百寿者の腸型は、他の高齢者（66-85歳）の腸型とは異なり、Bacteroides属とEscherichia-Shigella属の組み合わせで特徴づけられる。 b, Bacteroidetesの相対存在量のバイオリンプロット。高齢者と比較して、百寿者と若年層（20-44歳）はともにBacteroidetesが高濃度であった。© 2023, Pang, S. et al.
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その意味するところ
百寿者と若年者に共通する、高い種の多様性、バクテロイデス属や有益な可能性を持つ微生物の過剰発現といった腸内微生物の特徴の類似性は、非常に興味深いものです。縦断的なデータから、これらの若年層に関連するシグネチャーは、百寿者では加齢とともに増強されることが示唆されたため、このマイクロバイオームのシグネチャーは長寿に関連し、一般に加齢に伴う老化や慢性疾患に対抗する可能性があると提唱しています。
本研究は、腸内細菌叢のパターンと極端な長寿との関連を明らかにするものであるが、腸内細菌叢の老化パターンが健康な老化や長寿にどのように寄与しているのかは不明である。他の年齢層（特に他の高齢者）の縦断的データは、この問題の理解に役立つかもしれず、今後の老化研究で考慮しなければならない。また、百寿者の加齢に伴う慢性疾患に対する感受性を腸内細菌叢がどのように軽減しているのかも疑問である。百寿者の若さに関連する細菌を動物モデルまたはヒトで同定し、機能的に探索することで、この問題に光を当てることができるだろう。
シュアイ・ワン1、ウェイフェイ・ルオ2
1蘭州大学、蘭州、中国。
2Guangxi Academy of Sciences, Nanning, China.
専門家の意見
"著者らは、百寿者の腸内細菌叢を探索し、中国人の大規模コホートにおける若年者および高齢者の腸内細菌叢と比較しました。この研究は、完全に異なる地理的コホートに焦点を当てていることを考えると、健康的な老化に関連するマイクロバイオームの変化の普遍的なモデルに向けて追加する可能性があり、この研究は興味深く、重要なものです。" ポール・オトゥール、コーク大学（アイルランド、コーク市）。
論文の裏側
腸内細菌がヒトの代謝や免疫に影響を与えることを示すエビデンス4が増加していることから、腸内細菌は健康的な老化を決定する可能性があると提唱されています。このプロジェクトの開始当初、私たちは、長寿者の腸内細菌叢を研究することで、腸内細菌叢が長寿とどのように関連しているのかについて理解を深めることができると仮定しました。主な課題の1つは、極端な長寿の人々からサンプルと情報を収集することでしたが、これはCOVID-19パンデミックの下でより困難となりました。私たちは、百寿者のコホートにおいて、若者に関連する腸内細菌のシグネチャーを発見できたことに興奮しています。この発見は、百寿者を対象とした研究が、老化研究において高い価値を持つという確信を与えてくれました。現在、百寿者から何千もの細菌株を分離し、動物モデルでその有用性を検証しています。人間の寿命を延ばしたり、健康を増進させたりする微生物を見つけたいと考えています。S.W.さん
編集部より
"腸内細菌叢は、健康と病気に影響を与えます。本研究では、著者らは、百寿者の大規模なグループの腸内細菌叢プロファイルを記述し、異なる年齢の個人のものと比較している。" 編集チーム、ネイチャーエイジング
参考文献
Lopez-Otin, C. et al. 老化の特徴：広がる宇宙. Cell 186, 243-278 (2023)に掲載されています。この総説では、老化の12の特徴およびそれらの相互関係をまとめている。
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Biagi, E. et al. 腸内細菌叢と極端な長寿。Curr. Biol. 26, 1480-1485 (2016)に掲載されています。この論文では、センテナリアンやセミ・スーパーセンテナリアン（105～109歳の個人）を含む極端な長寿の個人の腸内細菌叢シグネチャーを報告しています。
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Wilmanski, T. et al. 腸内細菌叢パターンは健康な老化を反映し、ヒトの生存を予測する。Nat. Metab. 3, 274-286 (2021). 本論文では、腸内細菌叢パターンと健康的な加齢との関係を報告しています。
PDFは新しいタブで開きますArticle PubMed PubMed Central Google Scholar
Ghosh, T. S., Shanahan, F. & O'Toole, P. W. The gut microbiome as a modulator of healthy ageing. Nat. Rev. Gastroenterol. Hepatol. 19, 565-584 (2022). 健康的な老化における腸内細菌叢の役割についてまとめたレビュー論文です。
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これは要約である： Pang, S. et al. 百寿者の長寿は、若さに関連するシグネチャーを持つ腸内細菌叢に反映される。Nat. Aging, https://doi.org/10.1038/s43587-023-00389-y (2023).
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百寿者の腸内細菌叢に見られる若さに関連したシグネチャー。Nat Aging (2023). https://doi.org/10.1038/s43587-023-00395-0
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2023年4月6日発行
DOIhttps://doi.org/10.1038/s43587-023-00395-0
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ネイチャーエイジング（Nat Aging）ISSN2662-8465（オンライン版）
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