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アナログバイリンガル【ショートショートnote杯】

「おはようございます、お母さん」

「おはよう、しっかりチャージできた?」

「ええ。やはり最新型は違いますね。これで100時間稼働できるそうです」

「私があなたくらいの頃は、全身をケーブルに繋がれて一苦労だったわ」


「考えられないや。そうだ、今日はアナログバイリンガルが要るんだ」

「環境保護地区に行くんですってね」

「そうなんです。猫以外の野生動物は、もうあそこでしか見られないから」

「それなら新しい方にしなさい」

「あれはまだインプットが足りないようだけど」

「動物の言葉を解するには、新しい方が感度がいいのよ。それにコンパクトで持ち運びやすいわ」

「涙液が漏れてきたら?」

「アーカイブから“タケモトピアノ”か“ポイズン”の資料映像を再生なさい。古い方は、倉庫にしまっておけばそのうち動かなくなるでしょう」

「最近エナジーを補給しにくくなりましたものね。じゃ、行こうか」

そう言うと少年型ヒューマノイドは、人間の子どもの手を取って家を出た。

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