滅多にみられない昼

滅多にみられない昼に、出会ったことがある。この前の時も、なかなか面白かったな。

カーテンの隙間の光で目が覚めて、ベッドから起きて、部屋の窓からぼんやり外をみると、いつもと様子が違って人っ子一人いない。それに動物たちの気配もなくて。カラスの鳴き声がうるさいなんて、贅沢だったのかな。静けさのなか一番響くのは私の心音だった。景色は壁紙のように張り付いて、どこまでも自分の音だけ響いてた。

またまた、変な夢でしょと二度寝してみても、やっぱり同じ。喉が渇いたから、面倒でも起きることにした。ぬくぬくのパジャマのままキッチンに向かうと、カウンターの上の鉢植えの、おしゃれなローズマリーが目に飛び込んできた。

細長い緑色の葉の先っぽから、眩い薄紫色の光が滴るように生まれている。彼女の気分で生み出されるらしいその光は、それは触れてみることも忘れるくらいとても美しかったから、零れ落ちた光をお気に入りのグラスに受けて、飲み干してみる。

急に探検したくなった私は、靴を履いて、パジャマ姿で木のドアを開く。広い通りに出ると、そこには、角のないふわふわな10tトラックが並んでいた。

それも、目がちかちかするくらいどれも色鮮やかで、まるでカラフルな風船のよう。見渡す限り数多とある。何をどこへ運ぶんだろう。とりあえず何を運んでもかわいいだろう。絶対にぶつかっても誰も傷つかない、平和な乗り物だって一目でわかった。

物珍しそうに眺めていたら、一台ふと気になる色があって、近づいてよじ登って、運転席をゆっくり覗いてみた。その瞬間クラっとして、真後ろに倒れたかと思うと、私は部屋のベッドにいて天井をみつめてた。

そっとベッドから下りて窓の前に立つと、いつものように人がちらほら歩く姿が目に映る。カラスもスズメも元気よく飛び交ってる。兎に角、よく知っている昼に無事に戻ったの。

こんな不思議も世界の広さって言うのかな。でも、よくある夜の孤独もキレイにみえたこと、少しは覚えていたいから、滅多に見られない昼に会うのはたまにくらいが丁度いいって、そう思った。


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