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記憶からのてがみ

四季の自然を感じていると、突如として昔の記憶が断片的によみがえったりすることがある。 特に思い出されるのは、誰かに何かをしてもらったことや、当時は理解がままならぬままうまく受け取れなかったことをである。本当にそれは突然やってきて、記憶の旅へとさらっていく。 その度に、こんなこともしてもらっていたんだと、今更ながら与えられていたものやそこにちゃんとあったものに気づかされ、静かにトクトクと流れる感謝を感じるのだ。 以前より増して、私の中でそんな現象が起きている気がする。

    • 〔詩〕ひらり

      からっぽの四季のコントラストも ぎゅうぎゅう詰めの騒がしい彗星も 傾け得るちいさな雨のように 弾けるまぶたになったら 水掻きの痕にひらり香った すきはいいものだって

      • 〔詩〕無伝言

        背負いすぎた明滅にようやく触れてわれそうな よくある随一の三色でこれまでさえもあたため あなというあなからこぼれるようながしつづけた こう解したなんてないと花びらのように放って

        • 〔詩〕紙芝居

          めくりつづけて溶けた飴色と 1μふみだしたさっきのほぼ前世 心音で煮詰めて 掬っては透かしてみる 気取る動線に余裕でふるえる花鳥風月 湿り気に砂に花火に火花 めくるめく紙芝居

        記憶からのてがみ

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        記事

          〔詩〕くらし

          いそがしい いそがしい 栗の花の風に晒されて シロツメクサが待っている この身一つの暮らしのための羽音 空っぽの水中花とすれ違えば 無音のおもみ映しながら 私は咲く花に会うのにいそがしくて

          〔詩〕くらし

          〔詩〕ちねつ

          かたちのふしぎに慣れたらな 雨を呼び込み弾むからだ 地理にのみこまれるように たからのやまあびて石伝い ぼうっと擦り合わせた歳月と再熱

          〔詩〕ちねつ

          〔詩〕水とにぎにぎ

          お互いさまの甘く曲げたねつしせん ねこなで声の一番隅でいつでも ゆりかごみとめあえていたきっと かえりみちにたえうる深淵に しずけさでぬるくなった水とにぎにぎ

          〔詩〕水とにぎにぎ

          よもぎとスギナの磯っぽさ

          薄緑のスズメノテッポウが光りながら波打っていた田んぼに、水が張られてカエルの合唱が始まった。 冬も温めて飲み続けていた麦茶に飽きてきたので、代わりになるものを探していた。 今年野草に興味を持ちはじめたのもあり、野草茶はどうかと思い立つ。そこでよもぎとスギナを普段使いのお茶に取り入れようと試みた。5月に入り野草は成長期である。丈も葉も伸びて青々と茂っているから、必要分頂いてもまた生えてくれる気安さがありがたい。 お茶の味は、どちらかというとよもぎの風味と甘みが好みで美味しく

          よもぎとスギナの磯っぽさ

          あくぬき〔詩〕

          蒸気が立ち上る 視野の袖引かれるままに 誰かいるのと首をやる 爽やかに匂う湯気 身で皮で吸い上げた水で そらへの照明は齧られて歩き 包みは転がって行くんだと なにごともなかったように

          あくぬき〔詩〕

          たけのこの皮のおやつ

          4月も後半になり、そろそろ春の暖かさに体が慣れてきた。起きがけの布団の心地よさでそこから出たくなくなる時期も過ぎたことを知ると、あれもある種の旬だったのだと思う。 今日は小雨の中、道の駅へ買い出しに行った。 定休日の翌日で、新鮮な作物が並べられている。苺、ワサビ菜、わらび、ほうれん草、葱など。 何を買おうかと、足元のコンテナにゴロゴロ入った筍に目が留まる。 長さは30センチ以上、黒々としてずっしり重そうに見えた。採れたて特有の湿気を帯びて存在感がある。 筍のあく抜きを炊

          たけのこの皮のおやつ

          かぼちゃとわたとどんぐり〔詩〕

          かぼちゃとわたとどんぐり 種の照りに発芽を夢見る土 透明になってもちぎれずに おじぎとならともにいれる むごんこぼれるまるごと感

          かぼちゃとわたとどんぐり〔詩〕

          育む〔詩〕

          ぎんいろにうねる 眩しい足跡を追った 大画面のやわらかさを じきにひび割れ堰切る粒子 鏡となって迎える最後列 混ぜ込み湖畔育む空色帽子

          育む〔詩〕

          ゆたかなページ〔詩〕

          あなたからなんだよ こんなにも豊かなページ捲れる わすれていた写真は動かせないね ほんものだよ あったんだよ みせたくなったよ みせたくなるよあなた産み出したんだもの みせたくなるっていう細胞膜のあかりまでも かるい青空を自在にぐるり逆上がり 雨上がりにぴったりな着地音

          ゆたかなページ〔詩〕

          いにしえ〔詩〕

          かつてはぬくいなみのように いるだけでみとめあえたのかもしれない たびじにあまいこきゅうふくんだころも かりてかえすわっかのさそうねむけ

          いにしえ〔詩〕

          けちゃっぷ〔詩〕

          はんじゅくたまごのオムライスまで あまずっぱくぬるくする あんなにまっかでひんやりなの あたためたらそれはそれで あじがぼやけてピンとこないわ こいあじはいつもどこかぬるい おちたらなかなかいろあせない

          けちゃっぷ〔詩〕

          とろ風〔詩〕

          窓をあけた気がしたんだ 内が外になる微温い春のお通り とびでないわけにはいかなくて ゆびにもすきまふんわりあって 蒸気どうしころころ立っていたんだ

          とろ風〔詩〕