【Capacity】 ーある男の手記ー 2日目

 私が居る建物は2階建てだった。1階はコインランドリーとなっており、衣類を探したが洗濯機はすべて空だ。休憩スペースと思われる長机の上には文字化けした雑誌が置いてあり、無いよりは有ったほうが暇潰しにもなり良いかと思い、丸めてコートの右ポケットに詰め込んだ。
 パルスのキッチンで取っ手の無いフライパンの欠片を拾っておいた。調理する食材も、火も何もないが、後に役立つ時が来るかもしれない。

 昨夜見つけた建物へは大体2日か3日といったところだろうか。空っぽの腹の事を考えると、休息はこまめに取りたい。
 フライパンの欠片を左手に持ち、私は店を出た。

 3時間程歩いたところで不可解な人工物を見つけた。私の背丈と同じくらいの大きさで、金属でできたラックに私のトレンチコートよりも大きめの袋が空の状態でぶら下がっていた。よく見ると表面は爬虫類の鱗のような素材でできており、とても頑丈そうだ。袋の口の部分には、やや弾力のあるベルトが4本編み込まれており、結べば丁度巾着のようになり便利だろう。とりあえず素手で持っていたフライパンの欠片を奥に押し入れ、袋の遊んでいる部分を手で纏めるように持ち、先に進むとする。

 この荒野は目で見るよりも起伏が激しく、足元の凹凸もきついため油断して歩くと足を取られることが多い。不幸中の幸いと言うべきか、目覚めたとき私は厚底のトレッキングブーツを履いていた。これがもし革靴やその他トレンチコートに見合う小洒落た靴だった場合、ただでは済まなかっただろう。なんなら既に、足のマメが出来ては潰れ、出来ては潰れを繰り返し靴の中は膿塗れである。

 急な斜面を下ったところに大岩があったので今日はここで夜を明かす。ここの気候はどうなっているのだろうか。地面の状態からしてしばらく雨は降っていないと思うが、こうも更地だと降られても太刀打ちできない。
 考えても仕方のないことだ。私はただ歩き続けることしかできない。明日も目が覚めることを祈り、寝るとする。

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