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【イベントレポート】NMM勉強会#02 原盤出版ビジネスの民主化

こんにちは!
NMMコミュニティメンバーのいいじまです。

先月から開催している、コミュニティメンバー限定の勉強会
11月18日(木)に第2回を開催しました!

テーマは「原盤出版ビジネスの民主化」です。

日本で「原盤出版ビジネス」というのはまだ身近ではありませんが、世界では大きな潮流となっています。今回の勉強会では「民主化」というキーワードをもとに、なぜそのような潮流が生まれているのか、そして実際にどんな事例があるのかを、学んでいきました。

その模様を一部、お届けします!

原盤権と出版権

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本題に入る前に、前提知識のインプットです。
まず最初に押さえておきたいのは、「1つの音源には3つの権利がある」ということですね。

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著作権および著作隣接権は、「著作権法」に記されている正式な表現です。
ただ音楽ビジネスの世界では、しばしば違った呼ばれ方をします。
それが原盤権と、出版権です。

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原盤権は、レコーディングに係る費用を負担した会社に認められる権利です。レコード会社に限らず、事務所や音楽出版社が権利を持つこともあります。また1社ではなく、複数社が権利を持つ共同原盤というパターンも多いです。

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続いて出版権です。元々は楽譜出版の権利を指していましたが、派生して現在では、作家(作詞者・作曲者)から音楽出版社に譲渡された著作権のことを指すようになりました。

音楽出版社譲渡された著作権を管理し、楽曲のプロモーション[利用開発]をすることが仕事です。

ただ実際のところ、著作権管理はJASRACやNexToneなどの著作権管理事業者に信託譲渡あるいは管理委託をしているので、楽曲プロモーションが主たる業務と言えるでしょう。


なぜ原盤権と出版権が注目されているのか?

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さてここから本題です。
いま世界では、この原盤権と出版権がとても注目されています
その理由について見ていきましょう。

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理由①:世界の原盤・出版市場は伸び続けている

まずはシンプルですが、成長市場であることが大きいです。
世界の録音原盤市場CAGR(年平均成長率)9%出版市場についても7%と好調です。
もちろんこれには、SpotifyやApple Musicといった音楽ストリーミングサービスの発展が大きく関係しています。
そして多くの識者が、今後さらに伸長するだろうと予測をしています。

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理由②:カタログ(旧譜)のシェア率増加

CD全盛時代は売上の9割が新譜(発売1年以内)と言われていました。
しかしストリーミング全盛時代になり、比率は一気に逆転しています。
図の通り、アメリカでは66%カタログです。
アメリカだけでなく、世界各国で旧譜が新譜のシェア率を上回るようになってきています。

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理由③:再生回数基準の収益モデル

いま世界でシェアを獲得している主要な音楽ストリーミングサービスは、比例按分方式(pro rata model)と呼ばれる使用料分配方式を採用しています。
簡単に言えば、再生回数をもとに収益分配金額が決まるという方式です。

これは何を示しているかというと、収益予測が立てやすくなったということです。再生回数は長期にわたって安定的に増えていくので、1年後・3年後・5年後の収益が比較的容易に見越せるようになりました。

ちなみに海外では、「この分配方式が果たして最善なのだろうか?」という問いがホットな話題になっていますが、一旦ここでは取り上げずに置きます。興味がある方は以下の記事をご覧になってみてください。

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これらを踏まえて整理すると、以下のような結論が見えてきます。

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ストリーミングサービスの隆盛によって、楽曲長期的な収益化収益予測ができるようになりました。

それによりレコード会社音楽出版社、さらに投資家までもが、楽曲を有望な投資対象商品として捉え始めています。

いまや原盤権・出版権は頻繁に取引される資産へと変化を遂げ、権利そのものを買い取ったり、細分化・小口化された権利を購入したりといった民主化が起こっているので、とても注目されているのです。


原盤出版ビジネスの民主化 具体的事例

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さてここからは具体的事例の紹介です。
勉強会では全部で12個の事例を紹介しましたが、ここでは4つだけ紹介したいと思います。

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事例①:Hipgnosis Songs Fund

ここ5年ぐらいで、続々と大手投資機関が音楽著作権ビジネスへと参入してきています。中でもとりわけ存在感を発揮しているのが、イギリスの投資会社、Hipgnosis Songs Fundです。

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2018年創業ながら、次々とメジャーな楽曲の権利を獲得しており、既にポートフォリオは6万曲以上に上ります。そのうち6割が10年以上前の楽曲であることも、興味深い数字ですね。


事例②:Royalty Exchange

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楽曲の権利売買プラットフォーム事業では草分け的な存在とも言えるのが、このRoyalty Exchangeです。Jay-Zリアーナとコラボしたことも話題になりました。最近ではVydiaという配信サービスと提携して、将来発生するであろう収益額の前払いを投資家に要求できるサービスも開始しています。

1つ目ののHipgnosis Songs Fundはクローズドな取引でしたが、このRoyalty Exchangeは個人投資家を対象としたオープンな取引を可能にしている点で、より民主化というワードが当てはまるように感じます。


事例③:Royal

Royalピーター・ティールが運営するFounders Fundが出資をしたことで話題にもなっている、注目のスタートアップです。NFTを活用しようとしているところも、興味深いですね。

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Royalの特徴は、NFTを通じて音楽ファンに権利を分配しようとしている点です。トークンエコノミーによって、次の時代のファンコミュニティを創ろうとしています。

そしてタイムリーなことに、勉強会直後の11月23日には、世界トップクラスのVC「Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)」から5,500万ドルの資金調達を完了したというビッグニュースもありました。

まだ開発段階のため実績は殆どありませんが、今後の動向を注視したいところです。


事例④:Anote Music

Anote Musicは2018年に設立された、ルクセンブルグという特異な出自を持つスタートアップです。"音楽 × テクノロジー”をテーマにしたスタートアップ・コンペティション「Midemlab」の2021年ファイナリストにも選出されています。

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Anote Musicは一言で言ってしまえば、音楽著作権のマーケットプレイスです。Royalty Exchangeが個人投資家向け、Royalが音楽ファン向けとするならば、Anote Musicは両者ともに開かれた流通市場を作ろうとしているように感じます。既にヨーロッパを中心として実績も出ており、ローンチから1年半650万ユーロ以上の取引が行われています。

そして今年4月には、Anote Musicが日本に進出するというニュースも飛び込んできました。株式会社ロイヤリティバンクがパートナーとなり、日本初となるロイヤリティ(著作権印税)取引所の開設に向けて準備をしているようです。

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いかがでしたでしょうか?
このように世界では、原盤権や出版権に紐づく様々なサービスや事業モデルが誕生し始めていて、成功事例も数多く出てきています。

民主化に伴う原盤出版ビジネスの盛り上がりは、まだまだ今後も続くことでしょう。引き続きニューミドルマンコミュニティでも関心高くチェックしていきますので、ぜひ興味を持った方はコミュニティに参加してください!

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