西の端と東の端と、その真ん中で。
ユーラシア大陸の、西の端っこを見た。
見渡す限り、深く、純度の高い青だった。
まっすぐに走る水平線は、
ずっと遠くへと続いていくこの地球の果てしなさを描くようだった。
昨年、ニューヨークを訪ねた。
初めてのアメリカ大陸で、すべてのスケールが馬鹿でかくって衝撃を受けた。
冷たい風が吹き荒ぶ街中で、ふと思い当たった。
あれ。ユーラシアの最西端で見た水平線の、さらにその先が、この地なのか。
日本は海に囲まれた国で、はなからほかの大陸とは分断している。
わたしの住む東京からは、隣の韓国の端っこだって見えやしない。
ひとつの地球の上に存在しているからといって、
ユーラシアともアメリカとも、同じ海の上にあるだなんて、
教科書で見たからそうなんだろうな以上の実感など、ずっと持てなかった。
いま世界を飛び回っているコロナウイルスの蔓延具合を見ていると、
あの西の端から東の端まで、
つながったひとつの世界なのかも、と理解できてくる気がする。
肉眼では見えないし、音が聞こえてくるはずのない距離だけれど、
たとえばわたしがウイルスポジティブだったとして、
そのわたしがひとつ咳をすれば、それはたちまちあの西と東へと届いてしまう。
目に見えるものだけが正しく存在しているわけではなく、
どうしたって手の届かない真実もある。
ヴェールの向こうに見え隠れするものの正体が知りたいのならば、
いま立っているこの場所で、わたしたちは最大限の想像力を働かせるべきだ。
あの西の端に沈んだ太陽は、
あの東の端から昇ってくる。
それを知ってしまったからには、想像し続けるしかないのだ。
手が及ばないほど壮大な、嘘みたいな出来事のひとつひとつを。
そして、着実にひとつずつ、現実へと返していくのだ。
2020.04.01
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