地面師事件前後も丁寧に描いた力作
本書の概要
読了後の感想
大手不動産会社の積水ハウスが地面師事件で50億円以上の被害に遭い、その後に社内クーデターで会長が辞任、という一連の事件があったのだけど、当時は地面師事件なんて昭和でもあるまいし、ましてや不動産のプロ中のプロである積水ハウスが詐欺に引っかかるなんて失笑の対象でしかなく、どういう手口でこの事件が起きたのかというところにしか着目しなかった。
が、本書はその前後の社内力学の変化と会長の辞任劇を会長側の視点から描いている。そう、丁寧に取材をしているものの、追い出された側からの意見が多く、それ自体は文句はないし、取材した結果著者が辿り着いた答えなのだから否定もしようがないが、この点は頭に入れておく必要がある。だって、和田会長の功罪のうち、罪の部分も結構あるだろう。例えば、トップに20年も君臨し続けたり、際限ない海外事業の拡大であったりと。
あとは、日本企業の劣化だのコーポレートガバナンスだのを語り始めるのもどうかなと思う。