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組織に必要な人材を臨床心理学の立場から考えてみた。。。

~ラショナル・ビリーフ(合理的信条)で考える学生が内定を獲得する~

(1)組織に必要な人間・組織に不必要な人間

一人の人間の生涯所得は2億8000万円と言われています。もし、新卒採用した人材が定年まで勤め上げると組織はその人材に対してこれだけの投資をすることになります。人は組織の中で一番高い買い物ということもできます。さらには、組織にとって有用な人材は組織に対し多大な利益を与えますが、不用な人材は利益を出さないばかりか組織に損害を及ぼす厄介なものとなってしまいます。
逆にモチベーションが高くポジティブで優秀な人材がそろっている組織は成長が見込める組織であり、成長する組織です。そのため、あらゆる組織は優秀な人材確保に躍起になるのです。

(2)こんな学生は採用したくない

実際人事担当者が考える「採ってはいけない人材」とはどういったものなのでしょうか。「人のせい・環境のせいにしてしまう人」「すべて自分で抱え込んでアウトプットのない人」「ネガティブな考えをする人」「自己主張が強すぎる人」など、色々なタイプの「採ってはいけない人材」があります。タイプが多すぎて履歴書やエントリーシート・面接などでこれらすべてのタイプを見分けていくのは困難です。しかし、心理学の世界ではこれらの人々に共通するある特徴が解明されています。それが「イラショナル・ビリーフ」(不合理な信念)です。
※「イラショナル・ビリーフ」とは論理的でない考え方のことで、アルバート・エリス(Albert Ellis)という心理療法家が「Rational Emotive Behavior Therapy」(通称「REBT」日本名「論理療法」)と呼ばれるメンタルヘルスのケアなどに用いる手法の中で説明しています。

(3)ビリーフはこうやって生まれる

アルバート・エリスによると、人の感情はその人が持つ信念や固定観念を通して作りだされるものです。つまり、Activating event(出来事)が起こり、Belief(信念、固定観念)で考え、Consequence(結果)として感情が出るというもので、A(出来事)をB(ビリーフ)によって解釈しC(結果)感情が出る。これをABC理論と言います。この、信念や固定観念は「ラショナル・ビリーフ」(合理的信条)と「イラショナル・ビリーフ」(不合理な信念)の2つに分けられ、無意識に起こるものなのです。

(4)Study 1

次の事例をお読みください。
皆さんが野球部で部長を任されたとします。部の伝統として部室の清掃は1年生が朝早く部室に行って行うことが決まっていたとします。そこで、部長として1年生の後輩を選抜して部室の掃除を頼みました。次の日の朝、部室に行ってみると部室は汚れたままでした。頼んだ後輩に聞いたところ寝坊して掃除ができなかったと謝られました。次の日からはしっかり掃除するようにお願いしたところ、後輩は「分かりました」と答えました。しかし、そこから一週間一日も掃除を行った気配がないです。

皆さんが野球部部長だったら、どのような感情を持つでしょうか。ここに3つパターンを用意しました。以下の意見のうち、ラショナル・ビリーフはどれでしょう。
① 言うことを聞かない後輩が悪い。だから後輩は責められるべきで、私が激怒することは当然だ。
② 後輩に指示を徹底できない自分が悪い。だから自分は部長の器ではなく、部長をやめたいと思っても当然だ。
③ 先輩として後輩に言うことを聞かせたい。部長として全員を引っ張っていきたい。でも、部員たちも色々な考え方を持っているし思い通りにいかなくて当然だ。どうすれば上手くいくか考えよう。

これをABC理論にまとめると次のようになります。

この①~③のうち、①と②はイラショナル・ビリーフ、③はラショナル・ビリーフとなります。

ラショナル・ビリーフへの秘訣
ラショナル・ビリーフで考える人は「事実に基づいた」「論理的な」考え方で、起こっている事実と自分の願望を切り離して考えます。③の事例では「先輩は後輩の言うことを聞かせたい」「部長として全員を引っ張りたい」という願望を持ち、事実として「他人だから思い通りにいかなくて当然」と思います。結果として「解決方法を考える」というポジティブな感情を持つわけです。

(5)Study 2

イラショナル・ビリーフは願望を絶対そうでなければならない事実と誤認して起きる信念・固定観念です。次の文を読んで、「イラショナル・ビリーフ」をどんな風に変えたら「ラショナル・ビリーフ」になるか考えましょう。

出来事:                                                                           「今日バイトの先輩に話しかけたら無視された。」                                                                  イラショナル・ビリーフ:                                                                                      「先輩は私のことを嫌っているに違いない。何か自分が気に障ることをしてしまったんだ。」                                        結果:
「もうバイトには行きたくない。やめたい。」
                          
上のイラショナル・ビリーフをラショナル・ビリーフに変えると「先輩と楽しく話したい」などでしょうか。その結果「何か考えごととしていたのかな?それとも私の声が小さかったかな?明日もう一度話かけてみよう」などになります。以上のように、ラショナル・ビリーフで考えれば、よい結果(感情)が生まれるということを感じてもらえたでしょうか?

それでは、どうしたらイラショナル・ビリーフに陥るのでしょうか?


(6)Study 3

イラショナル・ビリーフは大きく「自分自身」「他人」「世の中・人生」の3つのベクトルを持っています。


①自分自身に対する要求:「自分は・・・であらねばならない」というベクトル
例えば、こんな感じです。
・「自分は、後輩には尊敬されなければならない」
・「自分は、人から嫌われてはならない」
・「自分は、成績は優秀でなければならない」 ・・・etc.
「自分は・・・であらねばならない」というビリーフで物事を考えると、それが達成できない場合(達成できない場合がほとんどですが・・・)、「不安」「うつ状態」「恥ずかしさ」「罪悪感」などに苛まれることになります。

このベクトルをこんな風に変えてみましょう・・・・
・「自分は、後輩には尊敬されたい」
・「自分は、人から嫌われないにこしたことはない」
・「自分は、成績は優秀でありたい」・・・etc.
つまり、「~ねばならない」を「~たい」「~にこしたことはない」に変換すると、「不安」などの感情から解放され、少しでも願望に近づくため自分に何ができるか考える余裕ができます。


    イラショナルビリーフ   ⇒   ラショナルビリーフ
  「~ねばならない」(義務)    「~たい」(願望)

こうしたほんのちょっとの考え方の違いで、イラショナル・ビリーフはラショナル・ビリーフに方向転換できるのです。

では他の2つのベクトルについても、この考え方でラショナル・ビリーフに転換させてみましょう。

②他人に対する要求「人は私に対して・・・であらねばならない」というベクトル
例えば、こんな感じです。
・「人は私に対して、ひどいことを言ってはならない」
・「人は私に対して、優しくしなければならない」 ・・・etc.
「人は私に対して・・・であらねばならない」というビリーフで物事を考えると、それが達成できない場合(これも達成できないことがほとんどですが)、「怒り」「激怒」「受動的攻撃性」(拒否的な態度や受身的な反抗)につながり対人間関係に障害が起き、悪いスパイラルに落ち込んでいくことになります。

このベクトルをラショナル・ビリーフに変えると「私に対してひどい言葉を言ってほしくない」「私に対して優しくしてほしい」となります。

「~ねばならない」を「~してほしい」「~であってほしい」に変換すると、「怒り」などの感情から解放され、少しでも願望に近づくため自分に何ができるか考える余裕ができます。


③世間・人生に対する要求「人生は私に対して・・であらねばならない」というベクトル
例えば、こんな感じです。
・「世間はこんなに頑張っている私をもっと評価し、希望の仕事に就けなければならない」
・「人生は私の思う通りでなければならない。そうでなければ人生は、ひどく堪えられない。哀れなものだ」・・・etc。
「人生は私に対して・・・であらねばならない」というビリーフで物事を考えると、それが達成できない場合(受動的では達成できない目標ですが)、「自己憐憫(自分をかわいそうだと思うこと)」「苦痛」につながります。結局、建設的なことができず、つぶやきだけにエネルギーを注いでしまうことになります。

このベクトルは「世間はこんなに頑張っている私をもっと評価してほしい」「希望の仕事に就きたい」「人生は私の思う通りにならなくて当たり前だ。でも思い通りになってほしい」などと考えるとラショナルビリーフになります。

「~であらねばならない」を「~したい」「~されたい」と変換し、そのために能動的に動くことで達成する可能性が出てきます。

どうでしょう?なんとなく、どう考えてしまうとイラショナル・ビリーフになるのか、どうしたらラショナル・ビリーフに転換できるのか分かってきたでしょうか?

(7)本日のまとめ

自分の思い通りにならないのは当り前のこと。そのことを考えず、断定的に物事を考えると怒りや鬱などの感情が湧いてくる。それが組織では伝播し、そのような感情が渦巻く。

「○○であってほしい」など希望的な考え方を持つと、いつも自分事として解決策を考えるようになる。そのような人だけで組織が作られるたら最高の組織になる。

人事は少なくとも前者のような人を雇い、組織が崩壊しないように人選する。そのことを考えると日ごろから後者の考えで行動することが面接に強くなる。。。というより組織人として強くなる秘訣となるのである。

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