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家具店で購入した棚の説明書から学んだ「認識齟齬を限りなく0にする」ということ

先日、仕事で他部と認識を合わせることがができておらず、結果として発生したミスがあった。ミスは他責にせず自責にすること。このミスを乗り越え成長するために、頭では分かっていても「いや、ちゃんと伝えたんだけどなあ」となんだか腑に落ちない部分もあるのが本音だった。

そんな話をしていると、上司から2つのフィードバックを頂いた。
「目的思考」による着手と、手段としての「認識齟齬を限りなく0にすること」だ。

前者については聞いたこともあるし、大枠が決まっていないとどう動いていいのかわからないため、すぐに腑に落ちた(何冊か書籍を読んでみることにした)。しかし、「認識齟齬を限りなく0にする」ということはどういうことなのか。人の捉え方や感じ方は人それぞれ。重要性は分かっているけれども、実際にどう行動するかはあまりイメージができていなかった。

しかし、その「解」の一端が本当に身近な場所で見つかった気がした。それは「家具の説明書」だった。シンプルかつ適切なその説明書は、認識齟齬を限りなく0にするエッセンスを示しているように思われた。

明日からは社会人3年目になる。「人を動かす」機会も今後増える。適切に人に伝えるための一端を、ここに記しておきたいと思う。


1.主役は図、文章は補足。

僕の中で「説明書」といえば、まず想定されるのは「文字の多さ」だった。スペースの関係ももちろんあるだろうが、限られたスペースに事細かに文章が書いてある。「説明書を読むのが苦手だ」という知人も周りに何人かいるが、おそらくこの文字の多さが一番関係してくると思う。

文章を読むことに抵抗の少ない僕はどうか。確かに1文1文読むのは読むが、正直、作業しながら細かな文字を読むのは苦労する。目も疲れるし、次第に集中力がなくなってくると「読む→作業する→忘れる→もう一度読む」のループに陥り、だんだんと面倒くさくなってしまう。

こうした説明書は、「伝える」という行為は行っているものの、受け手の集中力や文章への耐性、理解力による部分があり、認識齟齬が生まれやすいように思う。また、図が小さかったり見にくかったりすると、作業イメージも湧きにくい。

しかし、購入した棚の説明書を見て驚いた。文字がほとんどないのだ。「長さxミリのネジを横幅ycmの板に空いた円状の穴に留める」という動作にしても、「ネジA」→「板A」のように、実際に用いる図(ネジや穴の位置や縮尺も実物とほぼ同じ)で表現されているのだ。これであれば、「あ、こんな感じで留めればいいのね」と何も考えともスッとイメージが入ってくる。

ただ、文章がないのか、といえばそういうわけではない。必要な部分には必ず文章で補足があるのだ。例えば、不安定になりやすい箇所では「必ず2人以上で支えながら組み立てる」、ゆがみや緩みのリスクがある場所では「奥まで差し込む」といったコメントが記載されている。かつ、いずれも「⚠」というマークで欄外に表示されているため、「あ、これは気を付けなければならないな」とすぐに気づくことができる(かつ、「⚠」を濫用していない)。主役は図示+文章で補足という余白のある組み合わせだからこそ、読み手の理解を促進することができているのだろう。

2.紛らわしい部分には「振り番」と「〇の例」「×の例」を

棚が届いた際、箱を開けてまず思ったことは「振り番の多さ」だった。ネジ、板、その他の部品入った袋1つ1つに、すべてアルファベットで振り番が振られている。これにより、紛らわしい部品を誤って留めてしまうという「ミス」のリスクを低減している。そうでない場合を考えてみると、例えば「この長いネジを~」という言葉はあまりにも抽象的だし、「長さ3cmのネジを~」という言葉にしたとて都度測らなくてはならないのは面倒だ。「Aのネジを」と指示されると「Aのネジ」は1つしかないため認識齟齬が生じない。

ただ、工夫はそれだけではない。何しろ数の多い振り番。間違えて異なるネジの入った袋を複数開けてしまったら、「Aのネジ」がどれかわからなくなる。それはまあ、自己責任と言えば自己責任なのだろうが、そのミスを見越してか、説明書には丁寧に、該当箇所付近に「〇のネジ」「×のネジ」がそれぞれ図示されていた。長さ順や細かなネジの特徴もリアルに示されており、どれがどのネジかわからなくなった際にも安心して接合することができる。

3.禁止事項は何度でも、どこにでも書くこと。

天板の袋の一つには、一枚の紙が入っていた。記載されていたのは「最上段に棚板は設置できません」。棚板の位置を調整できる棚を買ったのだが、安全上の理由から最上段には設置してはならないらしい。

ここでいったん理解できたのだが、作業している中でもう一度、その文章に出会った。それは、実際に棚板を取り付けるフェーズのときだった。その同様の文章は、他の「⚠」マークよりもことさら大きく表記されていた。また、一度「仮」で設置した棚板を外し、再度取り付ける必要があるのだが、後者においてももれなく大き目な表示があった。

箱を開けた時、仮設置の時、そして、本設置の時。「わざわざ3度書かなくても…」とも思うのだが、もし1度しか、例えば最後しか書かれていなければ見落とす可能性もあり得る。他の文字と同じサイズであっても同様だ。こちらも濫用はよくないが、「ここぞ」という際には何度でも、どこにでも事項を書くことで、絶対にしてはならないミスを防ぐことができる。

1~3の事項は、ただ「家具の説明書」だからこそ言えるというものではない。日頃の仕事で他部に依頼する際、認識齟齬を限りなく0にしようとしたときに、大いに役立つと考えるのだ。

例えば1であれば、依頼内容の説明だ。具体的な業務フローを写真を用いて図示する(+必要な補足を吹き出しで入れる)といったことが考えられる。2は使える場面は限られるかもしれないが、業務の仕様書などでWordやExcel、PowerPointの欄外に×の例を記載する、3はMtgの冒頭と説明部分、そして終わりに毎回伝える、などで生かせそうだ。

認識齟齬を0にすること。難しいことだと思っていたが、ちょっとした工夫をするだけでも改善できそうだ。他者に動いていただきながら仕事を進めることも、今後ますます増えていくだろう。まずは試してみて、ダメだったら変更する。試行錯誤をしながら、少しずつ認識齟齬0、一度で理解できる・実行できる伝え方ができるようになりたい。


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