202311某日

ホンマタカシ『即興』@東京都写真美術館を見る。即興というタイトルの意味は最後までつかめず、英題が"Revolution 9"というのも、(音楽ジャンルとしての)即興のことをわかってないのではという疑念を生むばかり。しかし、展示は悪くない。ピンボールカメラの作品はかなり前にMackから本が出ていたので知ってるつもりだったが、そこから10年にわたって現在まで撮り続けているとは知らなかった。えらい。写真とは何かという問いに関する有力な答えとしてマチエールのなさがあるとすれば、ホンマタカシほどそれに自覚的な同時代の写真家も少ないのでは。あられもない、印画紙の、ツヤ。写真に美しさがあるとするならば、それはそこに写されているものにあるわけでも、その写されているものの記名性にあるわけでもなく、写真の物質性そのものにあるということを誰よりもわかっているのが、ホンマタカシであって、だからこそ、その美しさは、なにものも示すことなく、ただその写真とそれを見るわたしとの距離をあらわにばかりであるが、しかしその距離こそが美しさの別名であるのではなかったか。

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