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にゃんと鳴く

山根あきらさんの【にゃんとなく】というテーマで書く企画に勝手に参加させていただきます。企画いただきありがとうございます。

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 僕と暮らしている猫は、普段は濁点のついた鳴き声を出す。「ギャ」と鳴いている時は「おい、君」と呼びかけており、「ヴァ」と鳴いている時は気に食わない時だ。基本、態度が悪い。それは仕方ない。水は24時間循環し、トイレは自動で掃除され、食事も決まった時間に出てくる。おまけに夏は涼しく、冬は暖かい。つまり猫から見た場合、僕は何もしていないただの同居人で、たまに挨拶をするくらいの仲なのだ。
 そんな生意気な猫の態度が一変する時がある。それは餌が出なかった時。丁寧に餌箱の前に座り、尻尾もくるりと足元に巻いてこちらを見てくる。そして、まるで高級料理店で注文をする際に小さく手を挙げるように「にゃん」と鳴く。
 きっと猫はこんな気持ちなのだろう。「にゃんとなく、利口な声を出すと君が喜ぶ気がしてるにゃ。膝の上に乗られるのも嬉しいだろ」。あざとい猫だ。にゃんとなくじゃなくて、合っている。悔しいけど、僕は君に夢中だ。

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