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普通

 どうして電車の揺れは、こんなにも眠たくなるのだろうか。起きては、眠り。起きては、眠り。短時間で現実と夢の行き来をするものだから、情報の処理が追いつかない。結果、僕は降りたい駅で降りられないことが、結構な割合である。現実で駅名を言われても、もう少し眠りたいから、これは夢だと自分に言い聞かせるのだ。そう、自分自身を騙している。
 その日も僕は、友人との待ち合わせ場所に向かうために電車に乗っていた。少し混雑していたが、座ることができた。いつも通りゆらゆらの魔術に誘われ、睡魔に呑み込まれる。
 不思議な夢だった。いや、普通と言えば普通かもしれない。向かいの座席には7人が座っている。誰も携帯を眺めるわけでもなく、本を読むわけでもなく、眠るわけでもない。ただ、無表情で座っているだけなのだ。座席は座るものではあるが、違和感。
 降りたい駅名がアナウンスされる。僕は静かに、自分のほっぺたをつねる。

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