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第45回 税の本質を考える(論考編)

 「資本論-ヘーゲル-MMTを三位一体で語る」の、第45回。


 前回は問題の設定を行いましたが、このエントリだけで話が分かるようにしておきます。

 これはある社会モデルを想定して税の一般モデルを記述する試みです。

 すなわち既存の共同体に政府が現れ新通貨を導入することを通じて、その共同体で政府がやりたいことを実現する。

 そこでは税の徴収はどのようになされるか?という問題です。

 なお当然のことですが、この社会では資本制生産(利潤を目的とした生産)が行われてていないか、行われているとしても社会の片隅のごく一部だけという想定です。
 と言うのも、資本制生産が主流を占める社会は歴史上の一形態に過ぎませんし、われわれが目指すべき社会でもないわけで。

 そしてその考え方はマルクスとMMTに共通するものと言えます。

 それから、このモデルの基本構想はチャーネバ(2022) Monopoly Money: The State as a Price Setter を単純化したものです。


問題の前提(再掲)

 ここで税を具体的に考えます。

 ちょっとマンガの説明がよくありませんでしたが、「90nyunの課税」は一日当たり 90nyun 課税するということで(すみません)。

 なぜなら、消防士の日給が 90nyun なので、つまり一日あたり 90nyun の財政支出ということ。
 
 そして考えたいのは、均衡財政、つまりこのモデルにおいて、一日あたり 90nyun の徴税になるような社会です。

 政府は、発足してから一定期間に支出した額と、同じだけの徴税をその期間の終わりに実施すると?、というのが問題の設定のつもりです。

問題

前提

  • 消防士が日払い 90 nyun一週間(休日なし)働き、630 nyun の支出が為された。 

  • 七日目が終わったところで政府は 630 nyun全額の徴税を決めた。

  • 政府は消防士と徴税人として指定した。

  • 三人のうち誰がいくつの nyun を所持しているかはわからない。

問い

 消防士による徴税はどのように行われると考えられるか?

念のための条件

 彼らを大昔の「未開人」のように想像せず、平和で豊かな社会の住人であると想定すること。

 ではよろしいでしょうか?

徴税シミュレーション

 次のようになると考えられます。

 ②と③は、①が 630 nyun を納税しなければならないと聞けば、その時点で手持ちの全額を喜んで①に渡すでしょう。

 ①はそれに自分の手持ち分を加え、政府に返す。

 もし豊かな社会であれば、そうなっているのが自然です。

イスラム文化の場合

 似た話を思い出したのですが、イスラムの人たちと砂漠をグループで旅をするような状況で、日本人が普通にやるように、自分用の水が入ったペットボトルを一人で飲んでいたらとんでもない奴だと見做されるらしい。

 逆に、必要な人に水を施すのがあたりまえであり、正しいのです。

 それと同じ。

 必要な人には与える。

 どんな宗教であれ「豊かな社会」では、それが当たり前のことだよなとワタクシには思われます。

誰が徴税人になっても同じであり、誰がいくら持っていても話は同じ

 そうすると、政府は誰を徴税人にしたとしても同じことが起こるはずですね。

 あるいは、通貨回収ポストを置いておけばそれでよい。

貴重なご意見

 たったおひとりからレスポンスをいただいていたのでご紹介します。

 ありがとうございます!!

 しかし、これではダメなんです。
 政府が必要な nyun をいくらでも貸してくれるとわかったら、翌週には消防士をやる人が出てくるとは限らなくなる。 

 これが通貨の発行者と使用者の対称的なところで、発行者だけは自分のやりたい方向に共同体を誘導する力を持っているということがわかりますね。

 この場合は共同体に消防機能をビルトインすることでした。

 消防をやるんだ!ということを政府が示す状況を、モズラーは「自身を表現する (provision itself)」というふうによく言います。


 


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