国破れて山河在り
深い夢から目が覚める。黒く冷たい深淵。体の暖かさを感じる。
「ねえ、私は今生まれたの?」
天井を眺め、考える。煙草の煙で黄ばんだ天井を。
あの時、あの瞬間、私は壊れた気がする。全てが始まり、全てが終わった場所。
「消えたい」
静かに呟く。
私は何を手に入れたのだろうか?
疲弊しきった心の裏で溜息をつく。
ここが出発点。人生2週目の始発。
手持ちのアイテムはゼロ。歪んだ景色だけが広がっている。
『この世界は私の世界』
よく言ったものだ。目の前に広がる景色は残酷そのものではないか。
血で血を洗う兵士。死を望みながら生を教える教師。泣きながら笑う私。
雨の音が聞こえる。
私を呼んでいるのだろう。
家を出る。靴も履かずに。
向かう先には消滅の救いがあるのだろう。
ゆっくりと歩く。
少しずつ、その音は大きくなる。
助けてほしい。そんな一心で。
生まれた意味も知らずに、地上へ零れ落ちるだけの雨たち。
そんな雨たちが笑顔で私に言葉を投げる。
「君は綺麗に映っているよ。」
彼ら彼女らに私も微笑み返す。
「あぁ、私の見たかった景色はこれだったんだ。」
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