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研究室運営を支えるWebサービス

中村聡史研究室における運営のあれこれの試行錯誤については、こちら(学生30人に教員1人の研究室運営について(2017-2019))に書いているのですが、研究室を運営するうえで利用しているWebサービス(研究室運営を支えるWebサービス)には色々な工夫があるので、noteの練習がてらこちらに投稿。

ちなみに研究室運営において重視しているのは学生さんの成長と研究活動であり、そのために知識や成果、各種情報の蓄積と共有、コミュニケーション(指導、各種依頼など)、情報発信が重要となっています。なお、参考情報として運用にかかるコストも併記してますが、ただで使いたいというわけではありませんので、参考情報とご容赦下さい。

Scrapboxで議事録共同編集・研究ノート共有(教育利用は無料)

研究室の情報共有において圧倒的に使えるのはScrapboxになると思います。とにかく記事を個人・グループで気軽にかけて、画像をどんどん取り込むことができて、またそれぞれの記事をつなげるのが容易なのが助かります。2020年1月末時点で、中村研のスクラップボックスには5028件のページがあります。

Scrapboxにあるのは、グループで共同編集するゼミやミーティングの議事録、論文紹介のコメント、参加している学会の議事録、講義ノートといったものと、個人が主に書いて他人が少しだけ編集する研究ノート、HOWTO、研究者情報、ネタページなどの記事群になります。こうしたページは頻繁に参照されるもので、貯れば貯まるほど価値が高まっていきます。

ちなみに論文紹介の記事や学会の議事録などでは、投稿者や発表者がリンクとして表現されており、他の記事にその人が登場したときに自動的にリンクが貼られるので、あっ、この人こんな発表もしていたんだとたどることにつながるなど、かなり重宝しています。あと、複数回登場しているような研究者の方はこんな感じでページを作っていったりしているので、学会とかでお見かけしたときに、あっ! この人だ! と学生さんたちは思うことができるようです。

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ちなみに、Scrapboxではハッシュタグで記事を繋げることができるのですが、この方法だと可読性が下がるうえ、スペースを含むことができないなどの問題があったので、頑張ってリンクへと差し替えました。

アカデミックでの利用は無料なので、神なサービスだと思います。今の所、研究室を運営していて使わない手はまずないと思います。

Google Driveでファイルの共有(容量に応じて)

Scrapboxで完結してくれると助かるのですが、ファイルの共有などはできないので、その点についてはGoogle Driveに頼っています。多階層のフォルダを作って、そこにデータや原稿、スライドなどを放り込んでいます。ちなみに、Google Driveを使うのであれば、ScrapboxじゃなくてDocsを使えばという話もあるかもしれませんが、多人数での利用で頻繁におかしくなっていたので断念しました。

本当は、G Suite for Educationを利用したいのですが、学科や学部に1アカウントしか許可されておらず、他の研究室で申請されていたら利用することができません。多くの研究室がこの申請に挑戦し、そして断念しました。なんとかしてほしい...。

ちなみに卒業すると、その学生に紐付いているファイルが全部消えてしまうので、事前に権限を移譲とかしとかないとえらいことになります。

Slackでやりとり(無料 or 年間1500円x人数)

今の学生さんはメールをあまり使わず、開封率がとても低く、またコミュニケーションのコストがとても高いのでメールは使いものになりません。一方、学生さんたちが普段コミュニケーションに使っているのはLINEですが、LINEだと研究室のもろもろの連絡が入ってくるとすぐに破綻するので、コストがそこまで高くなく、またそれなりに使えるものとしてSlackを採用しています。

Slackの良さは言うまでもないことですが、必要に応じて(学年やグループ、学会など)チャンネルを分けて、そこでやりとりできるのが便利です。また、botを導入すると、役割分担や通知などを行ったり、Calendarのスケジュール通知や、Scrapboxの更新履歴通知などを見ることができるのでかなり便利です。中村研のSlackにはアーカイブ化されたものも含め、200チャンネルくらいあるっぽいです。

ちなみに、年間1500円というのはアカデミックプライス(85% off)で、本当に助けられています。なお、Slackのワークスペースを増やしていくと(色んな仕事でSlackを使っていくと)結局コミュニケーションは破綻しますので注意が必要かなと思います。

Google Calendarで日程共有(無料)

研究室にはたくさんの構成員がいるため、どうしてもスケジュール調整で予定が破綻しがちです。特に問題となるのが、教員・学生間のミーティングをどこにいれるかという話になります。ここでメールとかでやりとりすると、コミュニケーションにおいても、また予定の管理においてもまず破綻します。

そこで、私が2つ共有カレンダーを作成し、1つは私が私の予定を学生向けに公開する動かせない閲覧のみのカレンダー、もう1つは学生が編集可能なカレンダーとし、そこに随時予定を勝手に入れてもらい、予定を確保してもらう形式としています。

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今の所、たまに登録したスケジュールを忘れられることを除けば、うまく回っているように思います。

SlideShareで発表スライドの発信(無料)

学会発表を見る人は限られてますし、発信の場をそれだけにしてしまうともったいないという気持ちが強くあります。そこで、学会発表後に権利的にまずそうなものを抜いたあとで、SlideShareにスライドをアップしています。

現時点で、中村研としては159件のスライドがアップロードされており、このスライドをもとに共同研究やアドバイザの依頼などを頂いているので、かなり活躍してくれているコンテンツになります。

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また、他の研究室の方からもよく利用いただいているという話を聞くのですが、それ以上に、私が他の人に研究室の研究内容をプレゼンするときや、下の学生が先輩の研究テーマを引き継ぎ、把握するときなどによく利用されています。

GitHubでプログラムを共有(無料)

中村研のいくつかのプロジェクトについては、GitHubを利用してプログラムやデータを共有しています。GitHubにより、色々なバージョンのものを共有し、利用することができるようになっています。

ただ、GitHubはいい面も多いのですが、20~30人のメンバーに徹底させることは容易ではなく、教育コストが高いため、なかなか難儀しているところです。GitHubってどうやったら徹底できるんでしょうね。

Wordpress+さくらインターネット+独自ドメインでサイト運営(約2万円)

中村研では、学会発表後に必ずその発表報告記事を投稿してもらっているため、研究室のウェブサイトは情報発信がしやすく、かつ編集が容易なものが必要です。以前は、大学のネットワーク内にサーバを置いていたのですが、サーバトラブルや停電、研究で動かすプログラムの暴走などでしばしば泊まるなどの問題がありました。

ということで、独自ドメインをとり nkmr-lab.org 、現在はさくらインターネットのVPSを契約し、その上にWordpressを置いて、情報発信をするようにしています。割とアクセス集中することもありますが、Wordpressのプラグインなどを設定することで、今のところは問題なくさばききれています。


それ以外にも、研究室の運営を支えているWebサービスとして、独自に開発および改良したものに、下記があります。両方ともかなり利用頻度が高く、活躍しているものになります。

実験協力者募集LINE Bot(1000通までは無料 or 5000円/月)

ひとを対象とした実験では、実験協力者を集める必要がありますが、研究室内のひとには依頼できず、かといって全く知らないひとにお願いするわけにもいかず(例えば、学外のひとは気軽に大学に入れないので)ということで、適切な距離の学生さんへの実験依頼というのが重要になります。ここでメールだと学生さんたちは読まないし、Twitterだと誰が来るかわからないという安全面でも心配な点があります。

中村研の樋川くんが研究開発した、LINE Botを利用して実験協力者を集めることができるシステムは、研究をする上で必要になる実験協力者募集や、データセット構築のためのアノテータ募集を、LINEのメッセージ経由でやってくれるため、すぐにひとが集まるなど(1時間以内に集まることが多い)、かなり活躍してくれています。また、色々な大学の13の研究室でこの開発したサービスをご利用いただいているようです。

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LINE公式アカウントは1000通までは無料で送信できるので、その規模であれば無料で利用できますが、もっと送りたい場合は月5000円となります。

研究室ジタルライブラリを利用した情報発信(0円)

研究室運営において重視しているのは所属している学生さんの成長(+認知度を上げること)で、もう1つは研究し、その研究成果を世の中に発信していくことになります。研究をする過程で学生さんは成長していくので、結果的にこの2つは密接に結びついています。

ここで研究をしていくには、色々お金が必要なため、予算獲得はとっても重要で、どれだけ教育や研究を頑張ろうと思っても、お金がないことには始まりません。このお金をどう集めるかというときに、一般的には科研費などの研究予算や、ついて申請して獲りに行くことも重要なのですが、そんなに頻繁に申請できるものではありません。それよりは、色々な企業の人の目にとまって、研究室に興味を持ってもらうことが重要であると考えています。

そこで、もともと宮代理弘君が開発してきた研究室論文データベースを、Webシステムで登録・管理できるよう宮代君に改良してもらい、またそれをこちらで改良を重ねながら、研究室用に導入しています。

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このシステムで論文のPDFとスライドを気軽に閲覧できることもあって、共同研究やアドバイザの依頼を複数頂いており、予算獲得に繋がっていますし、外部の方がいらしたときに、このシステムを使って説明をしています。また、新しい学生さんが先輩の研究を把握するのにも使えるなど超便利です。


他にも研究として個々で使っているものとしては色々ありますが、運営自体に使っているわけではないので、こんなところで。

追記:新型コロナウィルスの影響でどうなったかなどの続きはこちら


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