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【400字小説】蓮

寺の大きな池にハツジマは酔っ払って飛び込んだ。
亀が驚いて大量に岸にあがる。
真夜中のことだったので、その気持ち悪さは見えなかったが、
ヘドロの汚臭がハツジマの鼻をもぐような痛さで捻り潰した。
酔っ払っていた意識もしゃっきり(した気が)。
真冬だから風が冷たい。
死のうとして池に飛び込んだことはアホである。
死への憧れだけが、風の強さに比例していた。

だけれど、寒くて死のことなど、どこへやら。
亀が慌てているのに、時間はスローで過ぎる。
強風に手足も出ない。
境内を寒さと一緒の体で引きずり歩いた。
匂いが消えなくて、だんだん笑えてくる。
ついには、はっはっはっと声を上げて
笑っていたが、涙も出ていた。
街灯の下に来るとその気色悪さがハツジマ自ら際立った。
途端に冷静になって、職質されることを恐れる。
本当は酔っ払ったんじゃない。
バダサイから買った大麻、常習性。
だから裏路地を歩くことにした。
亀が足に纏わり付いていることも知らず。

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