見出し画像

【400字小説】保険

忘れた頃に好きだった彼女からLINEの返事。
オウジはその恋を諦めていたので、淡々と受け止めた。
今さら追いかけても、遅いレスポンスに
振り回されるだけだと、自分に言い聞かせる。
保険レディの仕事をしているから、
その勧誘に繋げる気だろうと警戒。
でも、初めて会ったスタバの窓際の席で
ひとり読書していた彼女の横顔は美しくて、
2年半経っても忘れられない。
ほかの客ことのもお構いなく、
気がついたらナンパしていて、
ワンピースからむき出しの腕には
リストカットの痕があるのを、痛々しいなあと思いながら、
LINEを交換に漕ぎ着けた。

彼女がオウジのナンパに警戒しなかったのは、
誰をも信じてしまう精神病だったからで、かなりゆるかった。
オウジは何回かデートに誘った。
断られたり、一緒に中華街行ったり、
断られたり、出会ったスタバで話したり。

最後に会ってから7ヶ月。
今、思い出してせつなみ。
保険のための彼氏にしかなれないことに、悔しさいっぱい。

◆◆◆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?