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【400字小説】線

カガは20数年前、音楽雑誌で編集者をしていて、
カヌレの所属するレコード会社の担当だった。
実を言えば、カガはカヌレに恋をしていて、
でも人気モデルでもあったし、相手になんかされないと諦めていた。

それで1、2年で、カガは転職。
音楽業界を離れ、別の業界で雑誌の仕事を続けた。
のちに、カヌレは音楽プロデューサーと結婚。
カガは少し残念な気持ちもあったが、
遠くから祝福の拍手と祈りを。
そしてそれを機にして、カガはカヌレのことを
思い出すこともなく時が過ぎた。

カガも結婚して子どもも生まれた。
必死に日々は過ぎる、そんなある日、
何気なくYouTubeでカヌレの音源を見つける。

懐かしい。

思わず、ネット検索をしてSNSをフォロー。
曲も聴いてしみじみと。
交わった点としての思い出は線として併走していた。
どんな人生も線。
自分は自分らしく自分の線を、
途切れるまで精一杯引こうと、
大袈裟にカガは誓った。
それがかつて好きだった人への意地だった。

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