見出し画像

【400字小説】顔

リュウは変身したかった。
アオイに言ってもバカにされるだけ。

「こんなに科学も医療も進歩しているのに、
このしかめっ面を入れ替えられないのは
腑に落ちないんだよ」

「つまり整形したいの?」

「一生に一度じゃなくてさ、
毎日、その朝の気分で顔変えられるの」

「誰が誰だかわからなくなるじゃん。
わたしはリュウの顔、好きだよ。
わたしはわたしの顔嫌いだけど、
整形したら嫌でしょう」

「とんぼも顔、それぞれに違うのかねえ」

「そんな話してない……。聞いてる?」

雪がちらちら舞っていた、バス停、寒い。

「マック行こうよ」

「駅前のマックは潰れたよ」

「これからどこへ行くんだっけ?」

「駅前の本屋でしょう?」

「あ、デイドリーム」

「夢なんかじゃない。リュウはわたしと
確かにここにいる」

バスがやって来る。停車する。
すると、運転手も含めて全員の顔がアオイ。
それを見てもリュウは驚いた表情もせず、
「なんかいいなあ、ちぇぇ~」と舌打ち。

◆◆◆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?