【400字小説】犯罪に足を染める
「駅前で強盗だって。白昼堂々入店して
乱暴に金目のものを奪っていったみたいだよ、
たったの105秒でさ」
「そんなの捕まるだけじゃん」
「捕まりたいんだよ。舐達麻になりたいんだよ」
「なに、なめだるま?」
午後2時のわたしたちの2LDKでの会話。
ゴウくんはやはり舐達麻を知らなかった、
善良な市民だからな。
わたしはどちらかといえば悪い女なので、知ってた。
てゆうか大好き。
そのまっすぐで正直な生き方に憧れちゃう。
女の子らしく!って言葉が嫌いだしさ。
わたしか、わたしじゃないかが大事なんでしょう?
誰もわかってないよ。
ゴウくんも情けないよ。
セックスはうまいから別れないけど。
「ヒップホップグループ」とわたしは答えた。
「ラップは音楽じゃないって
レニー・クラヴィッツが言ってたよ」と
ゴウくんはどや顔で言った、で、爆笑。
もちろん笑う理由をゴウくんは知らない。
それがいいところだけど、
昔かたぎの公務員みたいにつまらないとも思ったね。
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