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【400字小説】撮影

カズキはポーズが多彩。
素人の友だちはもちろん、
モデル仲間からも一目置かれている。
所謂《ジョジョ立ち》をして
カメラに収まっても全く違和感がない、
それでいてオリジナリティ。
まるで東京スカパラダイスオーケストラの
個々のパフォーマンスみたいな感じ。
出る時は出る、引く時は引いて、
前面に出たメンバーをひき立てる、そんな。

しかし、実力は運を味方にするのもそれで、
カズキは売れないモデル。
男性の恋人と、女性のパトロンに
生活を守られている。

幸せなのか、不幸なのか。

でも、ラッキーなことでもあるので、
運もないわけではないのか。

先日、撮影中に、
大切な親友のモデルが、
仕事を辞めて結婚すると言うので、
目が乾くほど泣いた、悲しくて。
当然、撮影は一時中断になり、
どうしたのかと問い詰められたけれど、
本当の理由は言わなかった。

撮影再開後、カズキのポーズはらしくなく、
親友モデルの存在を打ち消すほど
独特で、良い写真は一枚もなかった。

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