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【400字小説】素直

誰かを待っている彼女を、ハヤシは見ていた。
かわいらしい子だなあって、おじさんらしく。

結婚15年目の40歳。
娘がふたりいる。
専業主夫なのは心を病んでいて、
働けないっていう冴えないオチ。

お腹が空いたファミレスで
今かとハンバーグセットを待っている。
ハヤシは日々、ハンバーグしか食べない。
お口も考えもオコサマ。
幼い頃、貧乏でゼエゼエハアハアだった家庭に育った。
その反動で毎日憧れだったハンバーグ。

妻が地方テレビ局の重役をやっているから
お金には困らない。
自分自身の扱い方に困るくらい。
病気に妻の理解がある、2つ年上。
そして、愛してる。

なのに、毎日、街中の女たちと
すれ違う分だけ、恋をしていることには、
罪悪感を覚えている。
今日の恋はファミレスの斜め向かいに座った彼女。
でも、ほどなくして男がやって来て、親しげに。
彼女の笑顔は、皮肉にもさらにかわいらしい。
それを見て、素直に落ち込むハヤシは、
筋金入りの大人のオコサマ。

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