【400字小説】病
ヤナギが竹原ピストルの『LIVE IN 和歌山』を
初めに歌ったのは、効果テキメンだった。
なぜならば参加者全員、
メンタルの病を抱えていたからだ。
「♪『俺、精神病なんですよぉ。』
なんて平気で言ってくるお前は、
うん、やっぱり精神病なんだと思うよ♩」
という歌い出し、
これ以上に最適な歌詞があったろうか。
おかげで空気は和み、
3時間のカラオケはあっという間に、過ぎ去った。
「ヤナギくんの竹原ピストルだっけ?
アゲアゲだったよね」
「控えめに言って、オレ、神」
なんていうちょっと時代遅れな会話を挟みつつ、
病気ゆえに健康的な生活を送る彼らは家路に着く。
バスで帰る者、歩きで帰宅する者、
チャリンコ、車、迎え……。
そんな中、ヤナギといえば、武空術で飛んで帰った。
実は神の使いで、同時に修行中の身。
雲の上の神殿に帰ると、
竹原ピストルが待ってた、彼が神。
「神様の歌、好評でしたよ。誰の歌?
って頻りに聞かれましたけど」
そう言うと神は微笑んだ。
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