(~22/08/14)特許法73条 共有に係る特許権
共有に係る特許権とは、二以上の者が共同して有する特許権ですが、ある共有者が他の共有者の意思に反したことを行うと、他の共有者の不利益になる場合があります。このような不利益となる行為を規制するために、73条の規定は設けられています。
・持分の譲渡、質権設定(73条1項)
他の共有者の同意が必要。実施者等の資本力、技術力いかんで他の共有者の持分価値が変動するため。ただし一般承継は同意不要。特許を受ける権利(29条1項柱書)が共有に係る場合も特許権の場合と同じである。
・別段の定めがなければ、自由に特許発明を実施できる(73条2項)
民法の規定によって禁じられているものを特別規定として本項で禁止を解除したわけではなく、民法の規定からすれば各共有者は他の同意を得ないで特許発明を実施することができるが、1項の規定に引きずられてこれに反する解釈がなされるおそれもあるので、念のためこの規定を設けた。
・実施権の設定(73条3項)
他の共有者の同意が必要。実施者等の資本力、技術力いかんで他の共有者の権利が有名無実化する。このため、同意を得ないでした実施権の設定は無効と解する。単なる同意権の侵害としたのでは、他の共有者の不利益が過大となる。なお、無断で実施権を設定した共有者に対しては、同意権侵害の損害賠償請求(民709条)を行うことができる。
・訂正審判(126条)、明細書等の訂正(134条の2第1項)
共有者全員でしなければならない(132条2項)。権利範囲の変動は、他の共有者の不利益となりうるからである。
・侵害訴訟の提起
(1)差止請求権(100条)
自己の持分権に基づいて単独で行使し得ると解する。
既判力は他の共有者に及ばず、敗訴しても他の共有者は独自に差止請求権の行使が可能。
保存行為と考えると、敗訴した場合の既判力が他の共有者へ及ぶため、他の共有者にとって酷である
(2)損害賠償請求権(民法709条)
自己の持分権に基づいて単独で行使し得ると解する。
損害賠償請求権は金銭債権であって、可分債権だからである
既判力は他の共有者に及ばず、敗訴しても他の共有者は独自に損害賠償請求権の行使が可能
時効3年
・不可分債権(民法428条)であることを理由に単独提起を認める見解もあるが、請求を行う共有者が無資力であった場合等の危険負担や、後々の求償関係が面倒といった問題がある
(3)不当利得返還請求権(民法703条、704条)、信用回復措置(106条)
単独で行使可能と解する。損害賠償請求権と同様の理由
時効10年
(4)別段の定め(特約)がある場合に他の共有者が同意なしで実施した場合
別段の定めがある場合においては、共有者の同意を得ずにした実施に対しては、債務不履行による損害賠償(民法415条)のみが認められる。
民法709条に基づく損害賠償が認められるのは、物権公示の原則より、かかる特約が特許原簿に記載された場合のみと解される。
・共有関係の条文
14条 複数当事者の相互代表
67条の2第4項 存続期間の延長登録
73条 共有に係る特許権
77条5項 専用実施権
94条6項 通常実施権の移転等
107条3項 特許料
132条 共同審判
134条の2第9項 特許無効審判における訂正の請求
・特許法73条
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