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(~'21/09/21)特許法93条 公共の利益のための通常実施権の設定の裁定(公益裁定)

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 特許法93条は、特許発明の実施が公共の利益の為に「特に」必要である場合に経済産業大臣の裁定により強制的に通常実施権を設定する制度です。
 特許権は独占排他権であるため、特許権の存在が公共の利益を害し、国民に多大な損害を与える事が考えられます。そのような場合には何らかの措置が必要ですが、私権の制約は公共の利益を守るという目的のためであっても必要最低限にすべきですし、また、通常実施権の設定によって全ての場合の要請に応じうるので、特許法は93条の裁定制度を設けています。

・経済産業大臣が裁定することとした理由
 公共の利益のため特に必要であるかの判断をしなければならないし、他の行政機関(たとえば、厚生労働大臣等)からの請求が予想されるためです。

公共の利益のため特に必要であるときの具体例(逐条解説に記載)
(1)発電に関する発明であってその発明を実施すれば発電原価が著しく減少し需要者の負担が半減する場合
(2)ガス事業に関する発明であってその発明を実施すればガス漏れがなくなりガス中毒者が著しく少なくなる場合

・謄本送達により協議が成立したとみなされます。

不実施裁定(83条)の場合、実施がなされていない正当理由がある場合には、通常実施権設定の裁定はなされません。しかし、本条ではこの規定は不準用です。これは、致死率の高い悪性伝染病の特効薬の特許のように、公共の利益の為に実施させることが「特に」必要な場合、使える製薬工場を全て使って特効薬を作る必要があります。このような場合にまで、特許権者の正当理由を考慮すべきではないからです。


・特許法93条

(公共の利益のための通常実施権の設定の裁定)
第九十三条 特許発明の実施が公共の利益のため特に必要であるときは、その特許発明の実施をしようとする者は、特許権者又は専用実施権者に対し通常実施権の許諾について協議を求めることができる。
2 前項の協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、その特許発明の実施をしようとする者は、経済産業大臣の裁定を請求することができる。
3 第八十四条、第八十四条の二、第八十五条第一項及び第八十六条から第九十一条の二までの規定は、前項の裁定に準用する。

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