IOKの後輩に会った

サークルの一つ下の後輩男から、おおよそ10年ぶりにLINEが来た。濃ゆい顔つきとじゃみじゃみ声が特徴的な、優しくて憎めない性格の男であった。そこそこに仲良くしていたけれども盃を交わしたほどではない、そんな言い方をわざわざしなくても良いけど少なくともこの10年連絡を取ってはいない、そういう間柄だった。顔も声も背丈もおおよそしっかりと(おおよそ、しっかりと!)覚えていたけれども、トーク履歴は一切残っていなかった。ひょっとしたら個別にLINEをするのは初めてかもしれない、それくらいの感じだった。


一発目に、僕がAマッソさんのYouTubeに出させてもらった時の動画リンクが送られてきた。

続けざまに
「お久しぶりです!YouTube見ました!良かったら飲みに行きませんか!?」
とのことだった。



AマッソさんのYouTube、出させてもらったとは言っても、もう1年弱も前の動画だった。そして横並びの出演者に滝沢カレンさん(なんと滝沢カレンさん!あとコンボイさん)がいたというのもあって、えらく不信感のあるLINEだなと思った。
僕らのネタ動画でもなんでもなくて、随分前に上がったのAマッソさんの動画、僕が母上とルームシェアしている様(世間では実家暮らしと言うらしい)を情けなさマシマシで話している動画をわざわざ取り上げて「YouTube見ました」と、「久々に飲みに行きましょう」と言うのだった。



絶対に怪しいビジネスだと思った。

これはもう仕方ない、めいめいの人生にランダムで訪れるイベント、マルチな大冒険へのイントロダクションだと、そう思った。我らが誇らしき学び舎、一橋大学からもそうした、暗黒マネーオーシャンに堕ちる者が現れてしまったかと、悲しみに暮れながら会いに行くことにした。僕なら大丈夫、そこまで想定して、堂々と向き合おうと、なんなら沼地から救い出してみせようと、嘘、それは無理にしてもしっかり対話の場を設けようと、そう思った。有り体に言うなら、興味があった。
レジュメの一つでも見せてくれよと、ワクワク恐々としながら会いに行った。




なんか、普通に、会って喋りたくなっただけのやつだった。
レジュメが出てくることはなく、しっかりゴリゴリと働いている様を教えてくれた。しっかりゴリゴリと、おおよそ僕の5倍ほどの年収を稼いでいた(これは、僕がまだまだこれからの芸人ゆえにあまりにも稼ぎが少ない、と見るのが正しい)。
とてもシンプルな話、クリーンにしっかり稼いでいる人は、わざわざ人を巻き込んでまで相手に稼がせる必要がない。行きつけのバーガーショップやらルノアールにいる大学生、どうか、目を覚ましてほしい。君を連れてきたキラキラした女の子と君は、付き合うことはできない。ウシジマくんの「フリーエージェントくん編」を見返して欲しい。



変わらず濃ゆい顔つきとじゃみじゃみ顔で、今の仕事のしんどさとか、その後の展望とかを話してくれた。お笑いに身を置くとともかくも社会の動きについて鈍くなる。新鮮な話が多くて楽しかった。他の後輩たちもそれぞれの道でもりもりやってるそうだ。とても頼もしい。

「芸人の活動とコンサル、結構似てるね」みたいなアクロバティックな結論に辿り着いた。違うのは収入だけ、とんでもなく差があるだけ、ただそれだけなのだ。あまりにもシンプルで乱暴で圧倒的な差があれども、そんなにげんなりしていない。
めちゃめちゃ冷静に収入を鑑みて、割り勘にさせてもらった。違う、向こうが奢ろうとしてくれたのを、グググと、ものすごい勢いで押し返して割り勘に落ち着いたのだ。ほんとにそうなのだ。
そう遠くないうちに、少なくとも向こう10年とか開いてしまわないうちに、ドガっとご馳走させてもらう。



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