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10/29(日) 人生に触れるなど

【朝】
営業で淑徳大学の文化祭に行かせてもらった。
高校のバスケ部時代、淑徳巣鴨と試合をした覚えがあるけれども、淑徳大学とはあんまり関係ないかもしれない。
試合をしたことがある学校の名前を妙に覚えてる感じ、ものすごく副次的ではあるけれどもバスケをやってて良かったと思うことの一つである。なにがどう良いのかは説明できない。ふとした拍子にぽーんと懐かしい、どこかで自分と紐づいた学校名が出るのが嬉しい、ただそれだけ。
そして淑徳巣鴨高校と淑徳大学はあんまり関係ないかもしれない。調べた末によく分からなかったから舞台上で話すのはやめておいた。そもそも客席には学内生よりも外からいらっしゃったお笑いフリークの方が多いように見受けられた。そういう分布を舞台上から眺めたり、アンケートを取ったりするのも楽しい。


ちょこちょこ学園祭に行かせていただく。学園祭はともかく楽しい。もっともっと名を上げれば、もっともっと学園祭に行けるんだろうと思うと売れていくのがともかく楽しみになる。右肩上がりに売れていくこととする。

学校に着いて、引率の学生さんが、僕らみたいなもんでもおずおずと気を遣って、タイムマシーンさんと同じくらい丁重に案内してくれるのが、大変初々しくて嬉しい。
気を遣われること、丁重に扱われることそのものが嬉しいのではない、僕の中の内なる王様性みたいなものを感じとらないで欲しい。ただ一生懸命に、過剰に恭しく案内する学生を見るのが好きだ。それはそれでどうなんだ。
ともかく若人がイベントをしっかり成し遂げようとする姿にあの日置いてきた青春の1ページを重ねる。重ねてなぞる。複写式の思い出、青くて淡いラインの思い出である。


楽屋に入ると、お決まりのようにホワイトボードに巨大な似顔絵を描いてもらってた。実写の造形がややコミカルな僕みたいなもんは、決まってキラキラと極端に美しく描かれる。美しく描かれれば描かれるほど面白い。素晴らしい。気を遣えば遣うほど本物と離れていき、比例して面白くなっていく。素敵でかわいらしい皮肉である。そんなところまで見越して過剰にかっこよく描いてたらちょっと嫌だけれども、それもそれでやはり可愛げだろうと思う。
なんでったって文化祭では大きな似顔絵を描かないといけないんだ、どこから始まった文化なんだ。催しが愛おしければ愛おしいほど、不合理でキュートなあるあるが生まれる。素晴らしい。




【昼】
学園祭を終えて、東武東上線で池袋まで戻って来た。夜の用事までまだまだ時間があった。サンシャイン辺りをうろうろしていた。
こういう時こそカレーを探索するべきか、でもあんまりカレーの口じゃないな、なんの口でも無いな、ああこういう時決まって、なんも決まらず、決められず、だらだらめちゃめちゃ歩いて無駄にヘトヘトになるんだよな、何回同じ過ちを繰り返すんだろうな、あーあ、と思っていた矢先に、ばったりと中学校の同級生に遭遇した。めちゃめちゃびっくりした。見た目がそんなに変わってなかったからすぐに分かった。

当時の印象で言うなら、ギャルの文字を書き、ギャルのトーンで話す、絵の上手なダンス部の女子だった。
中学の頃の僕は今より幾分か明るかった。文化祭にてクラスで披露した「ザ☆ピ〜ス!」のダンスでセンターを張るぐらい、それぐらい明るかったから、ギャルの文字を書くダンス部の女子とも普通に仲良く話していた。たぶん。中学の頃より幾分か暗い現在の僕が「たぶん」と言わせている。
ともかく普通くらいには仲が良かった。ひとしきりびっくりしあってから擦り合わせたが、たぶん顔を合わせるのは10年ぶりとかだったと思う。軽くお茶をしばくことになった。


この10年間、ベタな話、うっすらと思い出たちに壁を作っていた。
かなり情けない話だけれども、中高やら大学やら、ありとあらゆる同級生の結婚式を断り続けてきた。ご祝儀を捻出できないという生々しく情けない理由があるのに対して、同級生には「ごめんスケジュールが読めなくて」と嘘をつき、自分には「売れてない身分で顔を出すのが恥ずかしいからな」みたいな嘘をついた。

そうして築いてきた壁を不意に(ちょっとだけでも)壊す機会を与えてもらったようでとても嬉しかった。
広告系の仕事をしていて、まあ仕事の話を聞いたとて僕がどれほど理解できてるかは分からないけれども、ともかくかっこよかった。
意外に、自分が情けなくて恥ずかしいというフェーズは結構終わってて、彼女だけでなく、純粋にモリモリ働くなり、転職するなり、結婚するなり子供がいるなりしている同級生みんながかっこよかった。自分の人生を進めているさまがみんなかっこよかった。
今の僕は情けないというより(情けないけど)、かっこよくなるのがワンテンポ遅れてるのだと、そういう気持ちでいる。やや後ろ向きに、前を向いている。

もう情けないアピールをしてもどうしようも無いっていうのは肌感で分かっていて、なんとかかんとか自分を卑下しすぎないように喋ってみたけれども、とはいえまあ滲み出てしまってたように思う。

「中田は暗いようでいて実は根っこのプライドは高いよね?たぶん」
みたいなことを言われたのが、なんというか本当に、良かった。めちゃめちゃ良かった。ああなんか、中学の間同じ学び舎を共にしただけだけれども、ズバリ言い当ててくれる感じが、とても心地良かった。手前味噌だけれども、本当に優秀でかっこいい同級生たちに囲まれていたと思う。普通に医者とか多い。

ワンテンポ遅れてはいるが、これからガンガンかっこよくなっていく気配は感じている。このタイミングで会えたのが良かった。カフェ代をご馳走してもらった。うっかり書いてしまうが、ご馳走してもらった。頑張る。



【夜】
お茶を終え、ほっこりハートを携えて新宿に移動した。バイト先の社員さんにもつ鍋に連れて行ってもらった。バイトを年内で辞めさせていただく運びになっていて、そのプチ送別会だった。

ここ1年か2年はもう、毎日ゴリゴリモリモリ出勤だ!という感じではなくなってきていて、色々踏み出すきっかけみたいなものも感じて、いっちょ辞めさせていただくことにした。
めちゃめちゃ冷静に、経済的に見積もって、ちょっとだけ思い切っている。冷静に厳しく審査するなら、わりと大変、まあまあアウトかもしれない。
とはいえまあ、ちょっとだけでも思い切るようなステージまで来ていると思う。ここが頑張りどころ、2023年を通して手応えもあったし、同じかそれ以上になんとかかんとか魅力を吐き出し続けていけばきっとなんとかなると思っている、なんとかするしかない。

バイト先の社員さんとか、同級生にしてもそうだけど、お笑いの現状みたいなのを聞いてくれるものの、パキッと気持ち良く説明できない。ぬめっと賞レースとか普段のライブの話をする。

会社にいる人とは、会社の話をする方がよっぽど楽しい。僕にとっては貴重な、一般社会との接点であった。良い人がたくさんいて、会社の中で感じてきた小さなあるあるみたいなもの(コピー機の側に僕の席があるせいで、よく誰かが忘れ物をしていく、など)も、モリモリお笑いをやっていく上でとっても貴重な素材だった。
あと2ヶ月足らず、もらえるもん(お金とお金以外のもの)をとことんもらって巣立っていけたらと思う。そう遠くない未来、僕のいないオフィスで、なにやら中田くんがかましたらしいよと沸かせられたら最高だ。



濃ゆい日だった。どうあれめちゃめちゃ未来が明るい。今後も積極的にカレーともつ鍋を食べていく。

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