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生活指導と競技力との関連性は?

昭和世代なら大抵の人が一度は聞いたことがあると思います。
「生活から競技力は変わる」
これは「学力」でも「仕事」でも同じではないでしょうか?


本稿ではそういった言葉/指導が正しいか、検討します。

もちろん、生活がしっかりしていないと競技の土台は出来ない訳ですが、それにしても「細かい」指導を受けたことはありませんか?

今でもある程度伝統的に引き継いでいるところもあるとは思いますが、いわゆる強豪校ではこの生活指導が結構厳しく、徹底されます。

特に高校駅伝などで活躍するチームは意外とトレーニングでは「普通」だったりするわけで、それが「素質の差」で語られることにも繋がったりします。しかし、そういった学校を出て、また様々な選手を大学で預かる時に感じるのは、その「生活指導」の差

元々そこそこ強くて、でも強豪の「厳しさ」が嫌でやってきた選手は大学でもう一度そのあたりを見直してみると良いかもしれません。

それでは、その理屈の核となりそうな部分に触れてみましょう。
でないと、ただの「昭和的指導」と言われかねません。


例えば

生活が雑だと強くならない」と、言われてきました。

もっと細かく、日誌、グラウンド整備、靴の並べ方、道具の扱い、バッグの扱い/整理具合、掃除・・・とにかく多くの細かいことを言われます。ミーティングも具体的で細かい部分を指摘、考えさせられます。

当然、こんなのが競技にどう関係するのか?そういった不満を並べる選手も居ます。


当時もそうですが、今でも思うのは・・・

グラウンド整備ででこぼこしていたりすると脚に変な負担がかかる。(反論)→クロカンなどでも走ることがある→(それに対する反論)目的別でトレーニングすると・・・

全天候型グラウンドでレースをする場合、基本的にグラウンドコンディションにでこぼこはありません。それに近づけるために、土のグラウンドなどを整備し、地面に対する余計な集中をしない状態を創り出します。また、クロカン等で対応力を磨くなら、クロカンで練習すれば良いわけで、グラウンド整備をしない理由にはならない。

と、こんな感じです。


更に

皿洗い(掃除等)なら、雑に洗って汚れは落ちますか?丁寧にやればきれいになる。トレーニングでも同じで、丁寧さが大切ですよ、と。

こういった具合の話をしていくと、そんなのはトレーニングでしっかり考えれば良いわけで、なんでも結びつけるのはおかしい!ときます。

その通りです!

出来る人は、生活が荒れていようが、何だろうが結果を出してきますし、トレーニングは別物で、普段はいい加減でも、そこだけはきちっと出来る人も確かに存在します。

しかし、強豪校のメソッド/システムはそこを対象にしていません。

当時はあまり考えなかったことですが、教育の必要がない人(自分で伸びていける人)は強豪校でやる必要はあまりなく、放っておいても自分で伸ばしてきます。強豪を選ぶにしても、環境で選ぶわけで、さほどそのメソッド/システムを必要としません。(もちろん、「特別な人」がそこまで徹底するととんでもないレベルまでいけると思います)

なぜなら、このノウハウは多くの「普通の人」に活きるようになっているからです。

放っておいても出来ちゃう人はやはり「特別」で、だから話題にもなるし、注目を浴びます。自ら発信/告知/宣伝しなくても、「華/スター性がある」ので目立ったりします。

ただ、そういう人は一部であり、大抵の人は埋もれます。
ですので、「商品価値を高める」ために発信を、という提議をしたりしていますが、これは競技に関しても同じなんですね。

皿洗いでも靴を並べるのも、メモをとるのも・・・全部「普通の人」が少しでも質を高め、挑戦していけるようになっているからです。

確かに方法は迂回的かもしれません。が、確実に時間が経ってくると活きてきます。強豪でやっている選手が、3年間で確実な伸びを、安定感を、精神的な成長を見せてくるのはそういった部分があると思います。

もちろん、技術面にもあてはまりますし、知識の受け取りにも関わります。センスで左右されないよう、「最低限」これを身に付ける!という目的で構築されています。そして、それが徹底度とレベルが高ければ全国トップクラスの強豪になっていくと言えます。


後々に

強豪でもまれた人は伸び悩む/燃え尽きるという意見もありますが、これも多くの人がその強豪で培ったメソッド/ノウハウなどを活かさず/理解しておらず、継続していなかったりする場合も多く、一概には言えません。

また、しっかりと構築されたシステムから脱出し、自主自律でやるならなおさら自分の土台、強みなどを把握し、磨く必要があります。

このあたりが私も実業団時代に理解できておらず、それまでの土台部分に穴を開けてしまい、トレーニングノウハウばかり気にし過ぎて失敗した経験があります。

自分が指導者になって思うことは、トレーニングや技術面はどんどん新規性も必要で、漸進性が大事だと思います。以前と同じ方法をずっと取っていては成長余地が減っていきます。

が、生活面ではしっかり、安定的/継続的にやっていく必要があります。
そういったノウハウ/メソッドを伝えていくのが強豪校でやってきて、失敗も経験してきた自分の役目でもあると思っています。

そこをきちっとやることで、競技を終え、セカンドキャリアを考える時も土台が構築出来ているので、様々な応用/活用が展開できると考えています。

方法的には即効性ではなく、後々伸びてきてから気付くこと、とも言え、成果をアピールするのが難しいのが難点ですし、理解を進めていく為には説明をこうして発信していくのが大切かな、と考えます。

そして、気を付けなければいけないのは、「構築するのは時間が掛かるが、崩れるのは一瞬」ということ。


全国高校駅伝が終わって

これから新たな進路先で競技を続ける人も多いでしょう。既にスプリントは次を見据えて行動している人も居るでしょう。

気を付けなければいけないのは、大学でのトレーニングばかり意識を向けず、生活面や強豪で取り組んできた意味や内容を把握し、理解をしておくことだと思います。

また、休養/リフレッシュも必要ですが、上記のようなことと、生活やトレーニングを大崩れさせないよう気を付けることも大切ですね。これは実業団に進むときも同じだと思います。

強豪に興味がなかった人も、もし自分がセンスがあり、特別だと思っている人は気にしなくて良いでしょうけど、拙文を読んで頂けるような選手やみなさんは大抵が「普通」であり、だからこそ考えること、取り組むこと次第で大きく今後が変わってくる人が多いと思います。

私自身も「普通」の中から少しでも上を目指せるように取り組んできましたし、今もそう考えています。あくまで私見ですが、少しでも参考になれば幸いです。


余談ですが・・・

私が指導するにあたり、もちろん強い選手は結果を出しているところを選ぶのは良いと思います。同じように、学力が高い人は高い所を選ぶ。

ただ、自分のタイプが自主自立してやれるタイプなのか、手間暇かけて「面倒見の良いところ」でやる方が伸びるタイプなのかを考えておきたいところです。

そして、今は結果が出ていなくても「良い指導」をするところ。即効性はないけど、長い目で見てしっかり育てている/育てようとする指導者かどうかを考えるのは大切です。これはチーム/組織にも言えますし、大学/会社にも言えることでしょう。

自分がどういうところでやれば良いか?合うか?伸びるか?

ここは真剣に考える必要があります。

そして、大学/組織側も今素晴らしい結果が出ていなくても、長い目で育てていける/教育出来る期間ならそれを発信し、貢献できるよう考えていきたいところですね。

小さい規模だから、現在弱い/偏差値が低いから不要、ということはないはずです。ただ、ビジョンも方針もなく突き進むのだけは戒めておきたいですね。

自分も、少しでも多く、また目の前の人に貢献/お役に立てるかを追求していきます。


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ヘッダー画像はBeautiful Free images|Unsplash:https://unsplash.com/さんよりお借りしました。



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