#百合漫画大賞2020 - 投票をした/検討した作品たち

はじめに

百合漫画大賞2020の季節がやってきた。投票対象リストには196もの作品が並ぶ。これら以外の作品もレギュレーションを満たしていれば投票可能。

私は「百合というジャンルが好き」というより「好きな作品に百合ジャンルのものも多い」というスタンスなので百合漫画に詳しい訳ではなく(昨年の百合漫画大賞2019にも投票したかどうか憶えていない)、実際今回の投票対象も大半は読んだことのない作品である。しかしそれでも「今回これも対象か」という作品が一定数あり、3枠の投票のみでは到底満足できそうになかったので、詳しくないなりに「アッこれは!」と思った作品を(投票した作品含め)ここに簡単なコメントとともにまとめることにした。

ピックアップ

できそこないの姫君たち

私は絵が綺麗だと思った作品を軽率にクリックする傾向があり(読んでる百合は9割方この出会い方)、この作品はその代表格。ギャルとオタクがあるきっかけで接近する……という設定自体は実のところ興味を引かれたわけでもないが、表情など人物の描写にとにかく特筆すべきものがあり、みるみるハマっていった。
主役ふたりはもちろんその周りのキャラクターも魅力的で、目が離せない作品。

Still Sick

社会人百合。別の漫画賞レースにノミネートされたのをきっかけに知り、twitterのフォロワーさんが推していたので読んでみたらすぐハマった。
緩急のつけ方が心地よい。あと作者・灯先生のtwitterの感じが好き。

お嬢様はラブコメの主人公になりたい!

ハレンチラブコメの主人公をお嬢様にすることで360°死角がなくなる革命的設定と芸術点の高い幸運助兵衛描写、丁寧なキャラの掘り下げによってここでしか見られないやべーもんが描かれる。
ストーリアダッシュは編集部の実力か作家陣が黄金世代なのか、全体として美麗な作画の中に圧倒的個性(しばしば狂気)を湛えた「ここでしか読めない」作品が揃った強力なWEB漫画プラットフォームであり、その中で読み切りから連載を勝ち取ったこの作品はやはり本物。

裏世界ピクニック

女子ふたり怪異探検サバイバルSFホラー百合。原作は宮澤伊織先生の小説で、「スパイラル~推理の絆~」「スパイラル・アライヴ」「天賀井さんは案外ふつう」漫画担当の水野英多先生によるコミカライズ。水野英多先生だからという理由で軽率に読み始め、当然のようにハマった。百合を求めてない人ものめり込める設定・ストーリー・漫画表現。そのうえで回を増すごとに百合成分が醸造されていくので百合を摂取する動機による鑑賞にも耐える怪作。

ねこ神様はふわふわのお布団がお好き

これも対象だったのかシリーズ。ブラック企業でやりがい搾取される主人公がねこ神様と心を通わせつつ良質な睡眠を追求する、実用的睡眠知識も得られる作品。このところ更新頻度が落ちており心配。というかこれ書いてるときに気づいたが2巻情報が出ており、最終巻と書いてあった。諸行無常。
ヤングエースUPといえば「私たちは恋を描けない」という百合漫画(完結作)がある。てっきり今回の対象だと思っていたのだが、確認すると2018年12月に1巻が出たっきりである。2巻(完)は……?諸行無常。

シスコンお姉ちゃんと気にしない妹

ゑ?
百合コメディ誌CUNEに進出したやべーやつ。完全に変態でぶっとんでおり、楽しく読める。お姉ちゃん以外にもやべーやつらが登場し、読者もお姉ちゃんの変態シスコン性を最初ほど気にしなくなってくる。

飛野さんのバカ

筋肉☆太郎先生の細部までこだわりの感じられる作画、飽きさせない展開、作者あとがき「今週の筋肉☆太郎」等が話題の作品。百合漫画大賞2020特設ページにもこの作品の画像が出ており、順位が気になる。
たまに供給される飛野さん受け展開の破壊力が極めて高い。「最終的に百合はリバに落ち着くねん!」とは「できそこないの姫君たち」・赤沢いろはの金言である。

激辛お嬢さまは自分を罰したい

自分に厳しい万願寺千景お嬢さまが、常人にはおよそ理解できぬ細かい理由で自分に恥じ入り、マリア様に誓いを立てながら「罰」として激辛料理を食べる。ニコニコでの配信がストップしてしまってさみしい。個人的には、この作品で最も注目すべきは千景お嬢さまに寄り添い、ともに激辛料理を食べるご学友の志田さんである。

猫娘症候群(かとるすしんどろーむ)

かわいいと尊いで真正面から撲り殺す百合の暴力。キャラクターが結構増えていくが、誰と誰が出ても尊いのであまり問題にならない。私の印象に強く残っている話はここ以外いつ出てきたかよくわからない学校の先生が主役の「番外編」だったりする。あとFPSやる回(不定期)は根強い人気がある。

同棲生活

私が百合という言葉に反応するようになるきっかけとなった作品。本稿で挙げられているすべての作品との出会いはこの作品なしには語れない。既に付き合っているふたりがいちゃいちゃと同棲生活を繰り広げるという内容でほぼ一貫しており、カップルのいちゃいちゃを見たいすべての人類に自信を持ってお勧めできる名作。

私以外人類全員百合

平行世界を扱うSF百合。まずタイトルが強く、そのうえで繊細なタッチの画や「男性が滅亡した世界線」という設定など目を引くポイントが多い。「嘘が下手…」という台詞がとにかく好きで、引用するタイミングを常に窺っている。

ストロベリー・フィールズをもう一度

完結作。これまたSF百合(ちょっとしたネタバレかもだが)。なんといっても主人公(ヒロイン?)の晶(あきら)さんのビジュアルが反則級で、クリックせざるを得ない。各キャラのねじくれたバックグラウンドにより一筋縄ではいかない物語となるが、あのラストを見届けたのは感慨深かった。

隣の部屋から喘ぎ声がするんですけど…

どうコメントしたものか難しいが、とりあえず元気いっぱいでなんか印象に残っている。たぶんハーレムものということになるのだろうが、結構珍しい締め方をする。かも。ジャンプ+は意外と絶えず百合供給があり、なかなかどうして侮れない。ジャンプ+といえば「みみかきすと」という読み切りが今も忘れられないのでついでにリンクを貼っておく。序盤のドジ描写が度を越している感もあるが、「耳かき」という単語が出てからは完全覚醒する。恐ろしい。

ガールズ×セクハライフ

イマドキJK節原爽里(せつはら・さわり)が好きな幼馴染の女の子に過剰なスキンシップを迫る話。わりと容赦ないセクハラが繰り広げられるが、される側がまったく動じていないのでたぶん大丈夫。河合朗先生の同時期の連載に「ギャルとオタクはわかりあえない。」があり、あちらは「河合朗の綺麗な方」と称される。

うさぎのふらふら

これも対象だったのかシリーズ。ふたりで街歩きする話だが、どう考えても現実通りの街のつくりと、うさぎまみれで人間がほとんどいない光景の非現実感との対比が見ようによってはえもいわれぬ不安感を醸し出し、ニコニコのコメント欄には本作の設定に関する様々な憶測が飛び交った。終わってみれば「かわいらしい光景を手放しで楽しんでも正解だった」と思えるが、結局のところわからない、不思議な作品。少なくとも百合であることは間違いないのではなかろうか。

安達としまむら

ある意味、これも対象だったのかシリーズ。原作はめっちゃ巻数出てる人気作。未だに原作未読なので今後が楽しみ。アニメも楽しみだがWEB配信してくれるか心配。

魔法少女にあこがれて

ストーリアダッシュのやべーやつ。魔法少女にあこがれる少女。その心の奥底の歪んだ欲望が顔をのぞかせる時、ドン引きしながらも笑ってしまい、つい応援してしまう。

春夏冬さんに呪われるっ!?

対象リスト外。特別枠。「友情」の物語であること、男子との間に若干ラブコメの波動が出ることから「百合」にカテゴライズするのが少しためらわれるが、一応レギュレーションは満たしているという見方もできる。なにより単純に好きな作品なので名前を挙げたかった。質の高い勘違いコメディであり、善性の塊・春夏冬さんが中二病・環さまを絶望の淵()に沈めていく2段構え・3段構えのプロットが圧巻。

おわりに

2019年は「吸血鬼ちゃん×後輩ちゃん」が終わり、「ストロベリー・フィールズをもう一度」が終わり、「やがて君になる」が、「将来的に死んでくれ」が、河合朗先生の2作品が終わるなど、詳しくないなりにひとつの時代の区切りを感じた年だった。しかし2020年もまた本稿でピックアップした作品や6~7巻出ている作品たち、2020年に単行本が出たばかりの作品たち、「やがて君になる」アニメ2期が実現するかなど、楽しみは尽きない。いや、やが君2期はマジで実現してください。お願いします。以上です。

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