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2010 深夜特急カジノ

沢木耕太郎の深夜特急は何度か読み返し、今回やっとaudibleに入ったので聴いています。やっぱりマカオのところが私は一番好きです。この本が好きな人で、マカオのところが好きな人ってそんなにいない気もします。ビートルズで言うと、Beatles For Saleが一番好きなアルバムだ、と言う感じがします。

2010年の夏にNYで会っておきたい人がいまして、2週間ほど台湾経由(と言ってもトランジット)でトロント、NY、モントリオール、ナイアガラを旅しました。ナイアガラで所持金が5カナダドル札1枚になり、それを帰国日当日、カジノで200ドルまで増やして滝が見えるタワーホテルの前のベトナム料理屋さんで豪勢に食事をして帰りました。

と書くと、めっぽうギャンブルに強うそうに聴こえますがそうではないです。多分、深夜特急を初めて読む前、1990年ごろにちょうどラスベガスがリゾート化し始めた頃に今ではすっかり廃れてしまった古いダウンタウンのカジノに行った時のこと。一緒に行った友人がルーレットは勝てると言うのです。彼が言うには、

・ディーラーは入れたいところにボールをほぼ入れられる(ただしずれることはあるが)
・台は微妙に傾いているので、どちらか半分に偏りがちになる
・で、カモが来たら熱くさせて最後は00に入れてチップを没収する

そんなことを言うのです。この法則を知っていれば勝てるはずというのです。で、ただでビールやコーラを貰って、損をしても安いホテル代(当時はカジノがあるホテルはめっぽう安かった)を考えたらトータルでプライマイゼロになる程度で遊んでみました(あと、今はどうなのか分かりませんが、まだその頃は、数ドル程度でもルーレットで遊べました)。

確かに、友人の話で当たっているなと思ったのは、特定の5〜6番号に良く入ると言うこと。そして、結構熱くなっている中南米系の人、アジア系の人が最後に勝ってテーブルを離れる人は居なそうだと言うこと。

でも、初めてのカジノで100ドルくらい負けて私はそこで終わりにしました。ビギナーズラックなんてなかったです。

その2、3年後に、沢木耕太郎の深夜特急を初めて読みました。その時も、そして今回のaudibleでの朗読を聴いても、マカオの所、「お金、損得、熱、冷房、タダのアルコール、タバコ、それをたくみに操るディーラーとの心理戦、そして自分との戦い(やめるべきか、続けるべきか)」の箇所に触れると、あの時の友人のルーレットは勝てる説は、なんとなく当たっている気がしないでもないです。

しかし私には、こういう諸々の心理戦は疲れるしストレスになるので、1度きりラスベガスで経験をして以降は、ディーラー相手のギャンブルはやることはしていません。なので、カジノがある場所に行くと、これまた勝てるわけもない機械タイプのポーカー、もしくはブラックジャック、勝ち金をハイアンドローで倍々に増やしていき、時々ドボンし、まあ損出100ドルで諦めて退散というのが大抵です。

話は長くなりました。ここからが本題。

2009年に弟を亡くし、その悲しみに一区切りさせたく夏休みに旅に出た2010年。本当にお金をかき集めて旅に出て、別にホテル代や食事をケチる訳でもなくカナダの各街とNYで過ごしました。その途中で、ポールを3回、15列目、3列目、最前列でみましたし、今手元に残っているわずかなiPhoneの写真を見ても、いろんなところに行って、本当にすごい旅行だったと思い返しています。弟の分まで楽しもう、気楽に行こう、気持ちいい旅をしよう、やりたいこと、したいこと、観たいものを見よう、そんな感じでした。そうそうEVA航空のビジネスクラスも気持ちよかったです。

最終日、ナイアガラの滝(カナダ側)からアメリカ側に橋を歩いて渡り、すでに米ドルも数ドルしか残っていない中で、あまりの暑さに最後の米ドルでスムージーを買ったようです。

有金で買ったスムージー

そして、カナダに再入国。ここでホテルにパスポートを預けたままアメリカに出国してしまったことに気づき、かなり焦りました。その旨を橋の上のカナダの入管に伝え、橋の上からあのタワーのホテル(確かヒルトン)に泊まっていることを説明し、さっきまで居たことを伝えると、OKって言って通してくれました。


パスポートをホテルに置いてきて焦った・・・カナダ入管の手前

カナダ再入国時に、すでに5カナダドルくらいしか手元になく、まあ、クレカでキャッシングすれば良いのですが、深夜のトロント発台北行きまでまだだいぶ時間があったので、お腹も空いたし、ナイヤガラのカジノで増やしてみるかと思った次第。もちろん機械相手。最後の25セントだか1ドルだか忘れましたが、フォーカードが出て、賭け金が20倍になり、それをハイアンドローを繰り返して200倍超にしてやりました。よくあんなにハイアンドローが決まったものです。NYのチャイナタウンで、初めて整体をやってもらい、何年間かの凝りが溶解し、そのお陰で頭も冴えていたからかもしれません。

ポールのサイトでも紹介された写真

いろいろなものに一区切りでき、本当にお金を使い果たした夢の旅人。トロントでこの曲が聴けたのも宝物。そして、会わなければいけない人に撮ってもらった私と私の友人との写真も宝物で、今でも大切に部屋に飾っています。

大切な命をかけてやるべきものなんかこの世の中にはない。使命感を持ち、自己犠牲して全体に貢献なんてクソ食らえだと思います。社会はカジノと同じ。個人が勝てるようには出来ていない気がします。もし勝ってもそれは運が良かっただけで、実力があったからではありません。だから、かけるものなんてせいぜい100ドルくらいにしておいた方がいいですね。同じことは落陽でも歌われています。夢の旅人になって気がついたことです。弟の命日に。


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