雨の音で目が覚めた日の過ごし方
朝、雨の音で目が覚めた。
まだ薄暗い部屋の中で雨音だけが聞こえる。
起きようか、と体を起こしかけたその時、ふと今日は休日だったことに気がつき、もう一度ゆっくりと目を閉じた。
自分の中に雨の音がゆっくりと静かに響いている。
この感覚、なんだかすごく久しぶりな気がした。
思えばここしばらく、日々の時間に追われて雨の音をゆっくりと聴くなんてしてなかったなぁと、まだはっきりしていない頭でぼんやりと思った。
そういえば私は小さい頃から休みの日の雨降りが好きだった。
雨が降ると周りの音がなんだか静かで、流れていく時間さえいつもよりゆっくりと感じた。
小さい頃の私は、お気に入りの長靴を履いて傘をさして外にでる。
水たまりの中に入ってみたり、雨粒が途切れることなく落ちる葉っぱを見たり、傘に落ちる雨音をずっと聞いたり。
雨がずっと降り続く灰色の空を見上げ、この雫は一体どこで作られてどこから落ちてきているのかなぁ、なんて色んなことを空想したりして。
傘の中に入っている自分と雨が降り続く外の世界。
あまりの静寂に、今世界に自分一人だけしかいないような感覚。
そんな時ふいに頭の中で決まって流れてくる音楽があった。
小さい頃大好きで繰り返し見ていた「魔女の宅急便」のテーマソング「やさしさに包まれたなら」
『小さい頃は神さまがいて 不思議に夢をかなえてくれた
やさしい気持で目覚めた朝は おとなになっても 奇蹟はおこるよ』
この歌詞の意味などまだ考えることすらしなかったあの頃の私よりだいぶお姉さんだった主人公のキキの年齢をとっくに追い抜き、気が付けば「大人」になっていた私。
「雨が降ると嬉しくて外に出た私」と「雨が降るとまずは今日の予定を確認する私」
「1日が長い子供」と「1日がすぐに過ぎてしまう大人」
「子供」と「大人」
何が変わって、何が変わらず残り続けているのだろう。
何を得て、何を失ったのだろうか。
そんなことをぼんやりと考えているうちに明るくなってきた。
さぁ今日も、「大人の1日」を始めよう。
「大人になった私」に今も変わらず頭の中で流れているこの曲と一緒に。
『やさしさに包まれたなら きっと
目にうつるすべてのことは メッセージ』
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